本、というものが近い将来すべて電子化されたり、配信されるものになるだろう。
という人がいます。
本とは情報である、ということであれば、その通りとなるでしょう。
しかし、
途方もない時間、存在していた紙の束というモノが果たして
人々のもとから、完全になくなったりするだろうか?
本とは何か大事なことや素敵なことや、忘れたくないものが書かれている
モノでもあると思うのです。
人はモノに刻まれた履歴や記憶に、時間を見出します。
中に書かれている情報だけが本の本質ではないように思います。
電子化が進めば一方でそのことは際立ってくるに違いありません。
信陽堂、
ミスターユニバース、そして僕。
3方向から話し合って、
表紙やページの紙の色が日に焼けて褪せても、
ずっと手元に置いて置きたくなるような、
作品のような本を作りたいね。
と最初にスタートしました。
むろん、若干のメンバーの違いはあれ
写真集「VOMER」の時も
それは同じ志でした。
予算内でしかも厳しい時間制限。
その中でできてきた本。
デザイナー関君の紙もの、印刷物へのこだわり全開。
素晴らしい。
少部数発行。配本は直版か個展会場。
バーコードの付かない個人出版の本。
作品のような出版物。
それもその筈。
パッケージも、先行予約のおまけエッチング、その封筒に至るまですべてアイデア出しの上に成り立った、工夫を極めた手作りですから。
出版、装丁が
編集者とデザイナーの作品なら、
ものがたりを書くというのが著者の役割。
それもまた楽しい創作行為でした。
片手で持ちよい形の本を改めて開いて、
いまさらながら物語の字を追ってみると、
言い回しやリズムの緩急や、筋道の通し方。主題。
どこをとっても、修理、改善の余地のたっぷりと残る代物です。
我ながら。
しかし、それはどこかで線引きをしなければ形にはならないもので、
今回の線引きは、これでいい、と僕が決めたものなのです。
反省は次に向かうための土台ですから、
次はもうちょっと上手にできるかもしれない。
そう、次があるのです。
最初の打ち合わせの時に、こんな提案がありました。
展覧会のたびに
1冊ずつ本が増えていくと、楽しみですね。と。
なるほど、それはできるかもしれない。
1冊目のズフラは、何も決めずに物語を手探りで書き始めてから
完成まで半年とちょっと。
次の個展までには1年半あるんだから、
いいのが書けさえすれば、できるはず。
そう考えると、
もう次何を書こうかな、、、。
と楽しみにもなってくる。どんな像を彫ろうかな、というのとそれは同じもののようです。
今回お買い求めてくださった方々には本当に感謝です。
特に先行予約までしてくださった方々。
未だ形のないものに、いわば投資をしてくださった形となるわけで、
これは途中、僕は大いに元気づけられましたし、本当にありがたかったです。
装丁を見て、薄紙をめくり、ページをめくって読んでくださった方
そのうえで、ご興味をもたれた方は是非。(範囲狭いな(笑))
2冊目。お楽しみにしていてください。
いえ、次も買ってください(笑)
僕らはまた、“捨てられない本”の提案に、次も挑戦したいと思います。
なお、「ZUHRE」は引き続き、
信陽堂に直接の御注文で購入ができます。
また、前川の個展会場でも引き続き配布を予定しております。
部数に限りがありますが、今しばらくは在庫がございます。