2015年01月14日

足もとのレイヤーのこと

0114 (3).JPG

ゴマ塩おにぎりの断面、ではない。
拡大するとこんな感じ。


0114 (2).JPG


梅干しっぽいところは、実はザクロ石の結晶である。
ザクロ石、別名ガーネット。

快晴。
懇意にしていただいている。識者のNさんに半ば無理やりお願いして、
茨城県某所の地質の調査に同行させていただいた。
ここは数十年前まで採石場だった場所。
地権者のOさんのご厚意で立ち入らせていただいた。


0114 (13).JPG

砕石跡の生々しい崖は花崗岩である。いわゆる御影石の露頭。
花崗岩自体は日本列島の基盤を成すほどありふれたものだけれども、
そこのはガーネットが混じっているのですよ。
と聞けば、黙って居られない。
気がはやる。

現場に着けば、そこここに昔砕石された、あのゴマ塩模様の大きな石の塊が。

あ、ここにもう出てますよ。

ええ!?そんなあっさり?

母石の表面にちっこりあずき色のかけらが。
結晶らしく面取りをされてきらりと艶もある。

おお!なるほどこれは綺麗だ。

0114 (4).JPG

これは沢山含んでますね。と地質のエキスパート、Yさん。
この方の解説付きなので、ただの石くれが輝きを放ち始める。
うん、面白い。
Yさんが900グラムのハンマーを振るう。
われた表面を見ると、
あ、また出てきましたよ。

それからは僕ももう夢中で、ハンマーをふるう。

0114 (12).JPG

なるほど小さいモノならばもういたるところできらきら。
そうなると欲が出て来て、より大きくて色の鮮やかなものが見たいなあ。
となる。

0114 (10).JPG

が、そうそう大きいのは出てこない。
見つけた中ではこれが一番大きかった。
5o程はあったかなあ。でもハンマーをふるうには落石の危険が大き過ぎて
断念。欲をかいて大けがをしては元も子もないし、撤退。

ものの1時間ほどの滞在だったけど、
この場所の花崗岩の成り立ちやらのレクチュアつきなので、
もう楽しくて、おかげさまで実に濃厚な時間を過ごさせてもらった。
ちなみにガーネットは1月の誕生石で硬い鉱物。
粗悪な小さな粒は紙やすりの表面のあのざらざらだそうで、
意外と身近に使われている。
知らずに宝石で木の表面を磨いてるのか。

自分のサンプル袋の中を数えれば大小随分な数になった。
面白かったなあ。
ありがとうございました。

0114 (21).JPG

 最後に、立ち話をしていて、
何気なくYさんがひょいととり出した
コロッケのようなきれいな楕円の形の石。
ごつごつの表面には沢山の小さな穴がある。
持ってみると、手にぴったりと収まる。
それもそのはず、コロッケの真ん中、
表にも裏にも指がピタッとはまる
直径20ミリほどの丸いくぼみがあるのだ。
明らかに人の手が加わった痕跡だ。
それに軽い。
さっきまでハンマーで砕いていた花崗岩とはまるで重みが違う。

どうしたんですか、これは!?

いや、さっきそこの畑の端に転がってた。

転がってた?
これ、何なんですか?

多分石臼で穀物か木の実なんかを砕いた石器だろうね。
火山性の石だから、このあたりのものじゃない。
形状とか先の摩耗具合、用途から縄文のころだろうねえ。
こういう火山性の石は栃木、
近くても日光あたりまでいかないと手に入んないから、
そこまで歩いて採りに行った人が居たのかもねえ。
あるいはそこから誰かが持ってきたのかな。
加工の出来る石材はこのあたりだって豊富なのに、
どうしてもこの石材で作りたい理由があったんだ。
空気をたくさん含んだ石はぶつけても意外と割れにくいしね。

ああ、そうだねえ。

Yさん達。まるでつい昨日の近所の出来ごとのように、
一つの石ころから、とんでもないことを語り出す。

えっと、あの、5000年以上前にここに住んでた人の話なんですよね、、、。

なんだ、なんだ!?この人、というかこの人たち。
まるで探偵小説の探偵の謎解きの場面に、
今、まさにライブで立ち会っているみたい。

ドキドキしてきた。
僕にも何だか、
見慣れた風景がいきなり、違って見えて来た。
ような気がする。
なんというか、
風景や、足もとがとてつもない多層構造に思えた。
見えないのは、見慣れてつまらなく感じるのは、無知だから。
世界は知によって開かれた、って誰の言葉だったけか。

なるほどねえ。
何にも知らなければ、それは単なる白菜の植わった畑だし、
崩れた白茶けた崖でしかないわなあ。
そこにしつらえられた問い≠ノ自分が気が付かなければ、
世界は謎の存在しないのっぺらぼうだ。

世界はとてつもないレイヤー(多層構造)で出来ている。
無知のまま見る世界はその表面の薄皮一枚のみで、
それを世界のすべてだと思い込んで疑わないのは、
無知に加えて愚者というものなのだ。

世界の奥行きを垣間見ると、
日常の些事がどうでもよくなるものだ。
綺麗に目から鱗の2015年のスタート。
幸先がいいな。








posted by 前川秀樹 at 20:46| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする