これまで、採集を目的とした北海道遠征は、
6月と、9月 10月
印象として、さほど昆虫の層が厚いとは思えなかったし、
種類も個体数も、まあ現実にはこんなものか、
と納得しかけていた、
しかし、短い北の大地の夏がいかに爆発的に華やかなものなのかを
今回初めて思い知った。
7月の北海道はにぎやかだった。
例えば、ちょっと林道を歩いてみただけで、
ミズナラの幹はこんな具合。
なにこれ?
昼間っからこんななの!?これが普通?
ここでは、平地でも、本州では山地性のミヤマクワガタが基本らしい。
ノコギリクワガタや、コクワガタ、スジクワガタ。
居るにはいるが、少数だ。
珍しいアカアシクワガタが多数みられるもの嬉しい。
とはいえ、実は僕はクワガタ、カブトムシはどちらかというと守備範疇外だ。
それらしい木があると、癖のように探してはみるし、
賑やかに樹液にたかるさまを見るのも楽しい。
手で感触を確かめたくて、捕まえても見る。
だからと言って、自分用に採集して持ち帰ることはほとんどない。
子供の頃のあのドキドキを思いだす。そういう対象である。
バナナトラップというのも本で知って初めて実験してみた。
昼間、高温の車内でバナナを発酵させ、夕方に木肌に塗りつけておく。
強烈な発酵臭に樹液性の昆虫がおびき寄せられる。
というもの。
しかし、僕は夜には不覚にも寝入っててしまい、
見まわりをさぼり、朝になって行ってみたら、
あら、まあ それなりにちゃんと・・・。
効果はあるんだなあ。
そうだ、明日会うミウラさんちの一久にお土産にしよう。
もし一緒に行ってなにも取れなかったら、保険にすればいいしな。
とおもって、適当に摘んで行ったら、こんな量に、
結局、幸いにもその保険は使われなかったのだけど、
少しだけ、また別にお土産にして、あとは逃がしてしまおう。
さて、
その、一久との虫取りである。
夜はライトをやるからいいとして、昼間はなにを採ろうかな。
何を喜ぶだろか?と思案した結果、
とりあえず定番のオオセンチコガネにした。
早朝、宿からほど近い、程よい林道に車を走らせ、
何か所かに、ごろんごろんした固まり状の馬糞と牛糞を仕掛けておいた。
お昼に待ち合わせて、見に行ってみると。
やや!固まりがなんだか平らに慣らされている。
たった4時間ほどしかたってないのに。
恐るべき分解能力。
見ればおなじみの、緑色のキラキラが、人影に気づいて散らばってゆく。
糞を軽くどけると、いるわいるわ!
なんともすごい数である。
これまで僕が見た中では、一番の量だ。
ほら、早く捕まえないと逃げちゃうよ。
ピンセットじゃなくて、手でいいよ。
洗えば平気だから。
いっぱい採れたねえ。
クワガタにはかなりびびり気味の一久も、オオセンチのきらきらをみて、
きれいだねえ。嬉しい。
となんどもつぶやく。
なあ、そうだよなあ!きれいだよなあ!宝石みたいに。
この共感がおじさんも素直に一番嬉しい。
フキも大きい。大人に無理やり着させられて、複雑な表情の幼稚園児(笑)
コロポックルだ、かわいいよ。
二人と別れて再び一人でニセコ方面へ。
ニセコは基本、高原地帯なので、山地性の花が満開だった。
オオハナウドもその一つ。
白いレースのように美しい。
オオハナウドの花は、ハナカミキリの仲間やハナムグリ達の好物。
これは、、はじめてみるハナカミキリ。何だろう?
おお、アオアシナガハナムグリ。これもはじめてみた。
居るところには居るんだ。
これは普通種、アオハナムグリかな、鮮やかな緑色に見入ってしまう。
このノリウツギにもいっぱい来てるなあ。
アカハナカミキリにマルガタハナカミキリ。
これはノコギリカミキリ。
採集旅行は日が経つにつれて、採集標本がたまってくる。
夏の車内の高温ではあっというまに虫は死んで、あっという間に腐り始める。
そうなると、せっかくの採集個体が綺麗な標本にはならず
無駄になる。
昆虫は、高温には弱いが低温には驚くほど強い。
冷蔵庫に入れても、休眠状態になるだけで死ぬことはあまり無いので、
新鮮さは保たれる。
だから、いかにして保冷をしつつ運ぶか、というのが、
夏の採集の大きなポイントになる。
死んでしまったらば、仕方がないので、そのまま、腐らせず、
なるべく乾燥していただく。
ホテルの部屋の窓際で、まさか客がこんな作業に没頭しているとは
フロントも思うまい。
それにしても、7月の北海道。
興奮するに十分な要素が目白押しだった。
目標の狙いを変えれば、また別の層を覗くことができるに違いない。
それほど、何もかも一遍に動き出す、という感じだ。
これが、北の夏なのだ。
さて、残すは8月となったが、
きっとまた、違う舞台装置が待っていることだろう。
さて、それはいつになるのか。
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