あの岬に行く日。
別に決まってないけど、まあ、そんな感じの日。
途中、道の駅的なところで、農家の方々が市をやってた。
ああ、今日は日曜日なのか。
のどが渇いたからちょっと立ち寄る。
でも御茶とかジュースって感じじゃないなあ。
かごに盛りほうだいでリンゴ300円。
安!美味しそう。
あー、でも一人なので、少しだけほしいんだけど、
といって、立ち去ろうとしたら、
おばちゃんが追いかけてきてくれて、
あげるよ、と二つ握らせてくれた。
うわ、ありがとう、おばちゃん。
じゃあそっちの水気の少なそうな西洋ナシ買います。
あー、また荷物増えた。
運転しながら皮ごとリンゴをかじる。
リンゴは小さいけど、これもまた、ぎゅっと酸っぱい
味リンゴ。朝摘みだから、みずみずしい。
これはいい。
おばちゃん、ごちそうさまっす。
おまえはどうせ、梨とか林檎とか食わんのだろう?
寄ってきてもなにもないよ。
山道につぶれる青い虫。なんだこれは?としげしげ見ると
センチコガネ?なに?このへんのは青いのか?
センチコガネは、動物のフンさえあればどこにでもいる甲虫だけど、
北海道のは経験上茶色っぽいメタリックだとばかり思っていた。
それにしてもこれははじめてみる色の個体だ。
えー、生きたのがほしい!
紅葉の始まる季節、昆虫の姿はあきらめていた。
実際、林道に踏み入れても姿なんてさっぱり。
でも、ちょっと気温が上がってくると、
アスファルトの上を結構うろうろする影が。
ゆっくりと流す車の窓から路面上の動く突起物を見つけると、
過ぎたところで速やかに路肩に停止。
前後を確認して、車を降り、駆けつけ確認する。
目が慣れてくるとこれがなかなか確率が高い
名付けて。流し採り。
路肩が広く交通量が極めて少ない
北海道限定の採集方法である。
というのはでたらめで、
注意力が前方路面に偏ってしまうので
やはり危険なのでやめておいたほうがいいと思う。
キタマイマイカブリ。
胸の部分が特殊な色。これもご当地色かなあ。
結局こまめに停車し、確認しながら摘んでいった成果がこれ。
んー、青だけじゃなくこのあたりのセンチコガネは
バリエーション豊か。
再びため息。
思わぬ収穫があった。
そんな寄り道だらけの道中故、
昼すぎになってやっと海に出る。
そこからさらに海岸沿いに西へ。
この道を通るのは4年ぶりくらい。
駐車場に止めて、ちょっと歩く。
歩行者用の狭い穴倉のようなトンネルを抜けると広がる。
積丹ブルーと呼ばれるのがこれ。
ほんとに青い。
絶景と言わざるを得ない。
そのまま筆をどぼんと突っ込んで、
カンバスに写し取りたくなる。
あの岩で筆をしごいて、
余分な青を落として。と
ああ、気持ちがすーっと澄んで行く。
ふと小道に目を落とすと、
エゾシマリス。
樹上よりも地上性だそうだ。これはかわいらしい。ちっちゃいなあ。
あ、お前の尻尾が筆にちょうどいい。
ちょっと貸して。
たいていの観光客はここまで。
一度駐車場に戻り、別の遊歩道を進んだところに
僕のお気に入りの場所がある。
絵になる岬の細道。
ススキの向こうに
ライトハウス。
ほらね、なんかほどよい事件が起こりそうだ。
前もそう思った。
なんか物語が始まりそうな風景。
あの時も9月だったか。
春にも来てみたいものだなあ。
灯台の光る、夜もいいだろうなあ。
よし、次は一度この海の近くで宿をとろう。
さて、目的は果たした。
いいため息をたくさんつくことができた。
綺麗な色もたくさん吸い込んだ。
これ以上贅沢を行ったら罰が当たる。
もれなく当たるだろう。
計画的逃亡終了。
これで作れなかったらもう、
才能の枯渇と言わざるを得ない
なんとかなる気がするので、
なんとかなるんだろう。
たぶん。
また来年逃げてこられるといいなあ。
次はもうちょっと前向きに。
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