2013年07月23日

北海道・2 獲物とか宿のご飯とか


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森を見て足元を見ず、なんてもったいないことは決してしない。
ミクロからマクロまで、ちゃんと味わいたい。
というわけで、虫の話。

旅の前半、僕はあちらこちらにひたすらプラコップを埋めて回った。
全部でなんと60個(よくやるよ)
もちろん、腰につけた鈴をふりふり、おっかなびっくりの作業である。
だって、あの茶色のやけに大きな獣が・・・。

何を採るのかといえばいえば、
オオルリオサムシという北海道限定の美しい甲虫である。
しかもこの虫、
この時期にしか見られず、地域によって色合いが違うという。
僕はこれの動いているところが見たくて、
何年も夢見てきた。
本とネットで生態を調べ、孔のあくほど地図を見て、
やっと、実現した。

ここぞ、という場所を選んで、埋めたコップに酢を入れる。
途中で持参したミツカン酢が足りなくなって、
町のスーパーで、2リットル買い足した。
こんな大きい容器初めて。

数日待つ。
今頃、わさわさ入ってたらどうしよう。
夜に動く虫なので、寝ながらも、夢うつつで
あのシダやフキの根元を徘徊する勇ましい姿を思い描く。
どんな獲物でも、わなを仕掛けて待っている時間というのは
なんでこんなに楽しいんだろう。

我慢が限界に達して、いよいよ見に行く。
すでに熊の脅威はすっかり忘れている。
もう、コップの中で蠢くきらきらの背中しか頭には無い。

シダをかき分け目印が見えてくる。
さあ、どうかなー。
居ない。小さな別の甲虫が酢の中に浮かぶだけ。
はずれ。またはずれ。


まあ、そんなもんだ、そうかんたんになあ・・・。
人生ってね。こんなですよ。
ほら、そんな期待とかしてなかったし・・。
と自分を偽りながら、
覗き込んだ最後のあたりのコップに、

ああ!
入ってるー!
まだ元気に動いてるー!

理解のできない怪異に出くわしたわけではないが、
予測が的中する。
それが思い通りに目の前に居る感動というのは
やはり、特別なものがある。
その何が特別なのか?と思われるかもしれないが、
フィクションではないから、必ず結果が待っているというわけではないのだ。
このギャンブル性が自然相手の読み合いゲームの一番楽しいところ。

やー、臭いねえー。
この虫、独特の臭気を噴射するのだ。
そうとう、臭い。
いや、でもいいんだいいんだそんなのは。
ぜーんぜん気にしない。

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こっちは、マイマイカブリ、これもまた北海道のはキタマイマイという別の種類。
なぜ、関門海峡を渡れないのかといえば、
これは飛べない虫だから。
はあ、長年の目的を果たした充実感。
もう、これだけでもいいや。
と一瞬思ったけど、
やっぱり欲もでる。
なので、補虫網に持ち替えて、
他の北の虫も。

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ケマダラカミキリ。これはヨモギとかハンゴンソウによくいる。

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おなじみオオセンチコガネ。去年は秋口だったから沢山いたけど、
この時期は少ない。

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越冬個体のはずなのに裏までぴかぴかだ。

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今回は千歳、静内、日高、と移動しながらの採集旅。
後半は、父和昭と合流して、おっさん二人旅である。
親子で毎年、酔狂な虫獲りなんぞに興じるのは、じつはここ数年のこと。
二人とも実に30年近くのブランクを経て復活した趣味なのだ。
よくやるよ、と我ながら思う。


虫捕りツアコンガイドのプランニングは僕。
宿や食事を切り詰めて、そんなストイックなのは向いてないので、
まあその辺はそこそこの温泉とそこそこの夕飯にあり付ける宿を毎回探す。
どの日にどのあたりの林道を歩くか、グーグルマップを見ながら決める。
何カ月もかけて。楽しみは長続きする方がいい。

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この日はなかでも立派な夕ご飯。
新冠町(旧静内)の海沿いの宿。おかみさんが愛想がよくて、どれもおいしかったなあ。

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こっちは日高の宿の朝ごはん。バイキングといえるほどちゃんとしてなかったけど、まあまあ。

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千歳のホテルの朝ごはん、朝からこんなに食べるのはどうなんだろう。

若いころと違って強行軍はしない。よく休む。よく食べる。
でも、山に入ると、多分普段よりは不思議と疲れない。

こんなにきれいな欠片を見ているだけでなんだか心も体も
澱が洗い流されてゆくようなのだ。

今度は、場所を変えて青いオオルリオサムシが見たいなあ。
プランニングだけならタダだしね。











       







posted by 前川秀樹 at 22:47| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする