原義は、ほうっておけば悪い事態になるのをそのまま見過ごせないの意〕
自分より弱い立場にあるものに対して保護の手を伸べ、望ましい状態にもっていってやりたい感じだ。
と、新明解国語辞典にはある。
若い子が(限定すべきではないけれど)なにかを見た感想の声の代表格が、
「かわいい〜!」
ではなかろうか。
ではこの“かわいい”の状態を説明せよ。
といわれたらちょっと困ってしまう。
対象の状態もシチュエーションも変化に富み、範囲も広すぎて、一体どこからどこまでがかわいい、なのか、誰にも答えられないだろう。
近いところでは、キモカワイイ なんて変化球まで生み出されている。
ついつい僕も便利に使ってしまっている。
あらためて辞書で調べてみると、なるほど、
自分より弱い立場にいるものに対して、というところがポイントなのか。
とふと思う。
決して実際に手を差し伸べることは無くとも、保護の手を伸べたくなるような気持がつい起こる。ここが大事なのかもしれない。
さて、最近の自分の身近なかわいい、をすこし並べてみた。
滝下君より先日送られてきた画像。材木屋の店先の受付にて発見したらしい。
キャラクターマスコット、なんだろうなあ、、、。
この子達がこの材木屋で商品展開や、宣伝活動に大活躍!
をしている様子もみうけられない、ただこのカウンター横の壁にひっそりとかけられるためだけに作られたマスコット。
「たてよこ名前一緒かよ!」
と、つっ込んむことすらためらわれる無垢な感じが漂う。
この板の向こうに、お父さんの職場に自分も参加できる、誇らしげな子供の顔が見えるのが、まあかわいいんだろうな。
「おかあさ〜ん。おじちゃん居なかったよ、留守。」
「じゃあ、この紙にちゃんと自分でかいて、もう一回行っておいで!洗濯バサミもね!」
ひとりでできるもん。のかわいさ。
かわいそうプラスアルファの芯の強さが漂ってはいまいか。
とある港町にて。
ここで、ではなく、こんなところで。である。
「アラ、だんな、およしなさいな、こんなところで、、。」
「アリャ、面目ねえオカミサン。へへへ。」
この場合“かわいい"のは、はばかりを見咎められた殿方の“照れ”なんだろうな。
何でこれを言っているのが女の人だと思えるのか不思議だけど、、、。
「かわいい」は便利な言葉だ。
「かわいいね〜!」「ホントかわいい〜。」
で、通じてしまう。
範囲が広いだけに同意を得やすい他愛ない言葉の投げあいでもある。
が、そこでもう一歩。
どんな風に?どこが?なんでかわいい?
という風に会話が進むと、個々の「かわいい」のモチベーションが微妙にずれていることがわかって面白いことが多い。
ことによると、え?こいつこんなことをかわいいと思ってたの?
は?そこは普通違うでしょう!
というふうに相手の思わぬ嗜好性や心の闇(笑)が透けて見えたりする。
キモカワイイにつづいて、コワカワイイ、キタナカワイイ、ミジメカワイイ、コビカワイイ、......etc
その気持を抱く側のある優越意識と差別意識がその言葉の裏にひっそりと隠れている。
「かわいい」は通常、小さくかよわい対象への紛れも無くストレートな愛情の表現なんだけれど、
時にはまた投げかける相手によって、逆転することもありうる。
言葉って複雑だ。
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