
要するに固定式ドリルのことなのだが、
右手でハンドルを手前に回すと、
手前のドリルが下に落ちてくる。
金属でも木材でも何でも比較的正確に穴が開けられるので、
数年前にくず鉄屋から、1万5千円で購入した中古であるが、
未だに僕の仕事場で大活躍してくれている。
穴を開ける対象は、普通は固定テーブルの上で
バイスによってしっかりと固定されたうえで
穴を穿つ。
ところがせっかちな僕は、よく手で鉄片を持ったまま
そのままドリルを降ろす。
言うまでも無く
大変危険な行為である。
そのとき、気が緩んでいた。
またちょっと疲れていて、
ただでさえ乏しい集中力を、
さらに欠いていた。
穴が鉄片を貫通するかしないかというところで、
急に刃が鉄を巻き込み、一緒に回転したのだ。
ぐるりん!と。
魔がさした。
しまった!
と思ったその一瞬で鋭い切りっぱなしの鉄片が左手の中で回転し
皮膚を裂いた。
やってしまった、、、。
スイッチを切ってこわごわ手を見る。
油で汚れて真っ黒な手のひらの、人差し指と親指のあたりから
たり〜〜〜と血が出てきた。
手の甲側の親指の付け根あたりがどうやら一番ひどい。
ああ、、、。
心臓が早鐘を打つ。
血は出続ける。
動転してもしかたない、とりあえず傷口を洗わないと。
ティッシュで左手を押さえて、
洗面所に急ぐ。
傷口に石鹸が入らないように慎重に洗う。
それでも、水に触れてだけで刺すようだ。
背筋がぴ〜んと硬直するくらいしみる。

徐々に姿を現す、出来たてほやほやの複数の傷。
ひええ。
ぱっくり開いてるよ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。
1ミリ足らずの皮の下から半透明の脂肪の層が、、。
うわ〜〜〜。
僕の中身が、、。
かえって自分の手じゃないみたいに客観的になってしまう。
血の滴る手を目の前の鏡にうつして見る。
「こ、これがわたし!?」

いや、このせりふは違う。
なんか違う。
今、ボケなぞいらぬ。
いや、待て待て、
そんなことより、
血を止めなくては。
2階に上がって、電話中のツマに報告。
「やっちゃった。」
「ぎょえ〜。」
「なんかね〜前川君が怪我したみたい。」
電話口の相手に報告。
いや、そんなことはいいから、、、、。
とりあえずツマに絆創膏のいいのを
マツキヨに買いに走ってもらった。
まもなくどうにか血は止まりつつあった。気持も落ちついてしげしげ見る。
医者には行きたくないなあ。
「しかしこれは、縫ってもらったほうがいいのでは、、。」
「医者はいやなんだ。」
「じゃあとりあえず消毒して化膿止めを塗ろう。これ。」
ツマの差し出した丸い小さなこう薬いれ。
「どうしたこれ、今買ってきてくれたの?」
「いや、この前、アーク犬猫病院で、、、。」
犬用か!!!!?
まあ、なにも無いよりは。
それを素直に塗るほうも塗るほうだ。
陥没した傷口にそっと置くように、塗る。
傷に沿って絆創膏を数枚張る。
汗ではがれるので、引き出しにあった
塗装用マスキングテープでぐるぐる巻きにして、、、。
まあ、素人が出来るのここまでの処置だ。
その日はその不自由な左手のまま、出来る作業を続けた。
プールは休んだ。
これは一昨日の話。
ツマの介抱のおかげで(?)、
今のところ化膿することもなく、
肉が盛り上がってきているのを発見したのはようやく今日のこと。
すごい。早い。こうやって皮が出来て来るんだ。
治りは遅いだろうが、どうにか医者に行かなくてすみそうだ。
せっかちで得をした記憶は無い。
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結末はどうなるのか、どきどき、眉間にしわ寄せながら読んでました。絶対安静ですよ〜。
イタタタ、、、、。
いやはや己の粗忽の証は笑って過ごしてもらえれば、、、。今は痛みも引いて
仕事も普通にしてます。大きな絆創膏はまだ張ってますが。
お二人ともどうもご心配痛み入ります。