今ころは南半球のインドネシア・ジャワ島は、乾季のはずなのに、
今年はなぜかそれがちょっとくるっているらしい。
連日雨、雨、雨。
はるばる赤道を越えてなんでジャワまで?
まあ、そのいろいろと、野暮用で。
要するに、
こんな。
こんな。
こんな、感じをどうしても体感したくなってしまったわけですよ。
案内してくださったのは、ジャワ在住5年になる、日本人の吉川さん。
昆虫アクリル封入標本をジャワで製造する会社を営んでおられる、
たくましくもユニークな好人物。
これまた僕と同世代。
彼はまた、現地昆虫採集ツアーの企画も自ら手掛けているというので、
僕は今回、父、和昭を誘って二人で申し込んだのだ。
物好き親子だ。
主な採集は夜のライトトラップ。
日暮れまでに山に登り、澤を見下ろす山の背に白い布を張り、
ライトアップ。
むろん、電気なんてないから、
30キロはあろうかという発動機をかついで、ぬかるみを延々と登る。
長い時で1時間ほど。
途中の民家でいったん休憩。
現地の案内人や、吉川さんのスタッフたちがポーターとなり、すべての荷物を運んでくれる。
晩御飯の準備とかもろもろ。
彼らの足取りの軽いこと、軽いこと!
すごいなあ。頭が下がる。
肉体的基本スペックが違いすぎるので、
僕らはまあ、自分の荷物だけで、ゆっくりマイペースで。
雨は降り続くのです。
うわ!本当に来た!飛んできた!落ちた!
降りしきる雨をものともせず、
発動機のエンジン音にまぎれて、重低音の羽音が闇の中からあらわれる。
ライトで、澤の向こうの山の瀬を照らすが、
目視で光の届く範囲は限られている。
足元20mほど下に見える巨大なヒカゲヘゴの葉っぱより下は真の闇だ。
その闇からいきなり湧いて出るように、
ぶうん!と光の輪に飛びこんできて、足元の草むらに不格好に追突するのが、このカブトムシ。
コーカサスオオカブトという。
まるで漆黒の戦闘ヘリみたいだ
数メートル先の戦闘ヘリの着地場所を確かめるや否や、
現地案内人のママンさん。通称、裸の大将(笑)が
何事か叫びながら、ものすごい速さで、闇の斜面を駆け降り、
再びヘリが飛び立つ前にその漆黒の体を素早く正確に押さえつける。
うーん。“ここぞというときの、俊敏なデブ”っていいなあ。(笑)
性格も明るくまさに大将肌の彼は愛すべき虫マスターのキャラなのだ。
カブトムシを手にする父和昭の後ろに写るのが、ママンさん。
こんなのはまだ中型、と言いたげ。
え?!?そうなの?
これで?
ライトトラップの現場では、日の暮れる頃、夕食の準備をする。
トラップの設営、雨よけの幕の設営。
そして何より全員分の夕飯の調理などすべて担当してくれたのが、
スーパースタッフのアッセ。30歳。頼もしい。
炭のいい香りが谷あいに広がる。。
今夜は天気は大丈夫そうだね。
この日は、バナナの花とイワシの塩漬けの炒め物。それに汁そばに生の野菜。
美味しかったよ。今日も御馳走様。
昨日の山羊汁もイケた。
煙をみながら、のんびりと巻煙草をふかす。
僕は巻煙草の巻き方一つ知らない。
ここではすべて初心者。
小さいことも全部彼らに教わって。
そんなふうに日暮れを待つ、いい時間だったな。
こういう時間は何物にも代えがたい。
そんなライトトラップは合計4晩繰り返した。
場所は3か所。
どの日も雨の影響で集まり方は生憎の結果だったらしいけど、
いえいえ、吉川さん。十分です。楽しかったです。
【関連する記事】