DEE'S HALL 像刻個展「月の居ぬ間に」
おかげさまで、ご好評をいただき終了することができました。
方言の音や風の音、四季の変化ある風景、土の色、海の色、山のシルエット
そういうなんとも漠然とした空気というか、そこに当たり前のようにあるもの、
そうしたものをひっくるめて”風土”と呼ぶのでしょうが、
今回はそれらを自身で感じ、体験し、採集し、
きちんと驚き、喜び、寿ぐことから始めようと思いました。
これが僕の拾ってきた日本ですよ。と。
始まりにこだわるかわりに、
あそこに行きたい。あんな作品を作りたい、と結果を強くイメージし、
また志向することをやめました。
何かに強く憧れ、その後追いをすることが今の自分の制作ではないな、
と思ったからです。
終着や結果を追い求めすぎると、つい大切なポイントをスキップして
最短ルートを辿りたくなりますし、
大事な旅が、目標達成のための単なる選択可能な手段と
成り下がってしまう恐れがあったからです。
そうなりかけた自分への自戒を込めて。
酒ではありませんが、丁寧に醸す。
驚きや喜び、平たく言えば”感動”が、醸されて
なんとか許容できる形を帯び始めたところを到着地点としました。
そうした旅の痕跡が今回の作品の作り方です。
昨年、東北を何度も訪れて素材探し、動機探しをしたことが大きく影響しています。
結果としてそれが多くの方の思い浮かべる既存の日本のイメージと離れていても、
それは僕が旅の結果行き着いた小さな頂きですから、良し、としました。
自分の中にある”日本”という課題はしかし手強い。
日本は、体の隅々まで行きわたり染み付いたものです。
あまりに慣れすぎて当たり前。
それを客観的に異国から来た人のように、初めてそれを見る人のように
僕は驚いてみる。
今回の、「異界と郷」というテーマはそういうところにありました。
僕自身が「マレビト」に化けて郷を訪れ戸惑ってみせる、
もちろん僕自身は作品に身をやつして。
外から来た異なるものに郷の人々もまた戸惑い、驚き、誘われてしまう。
という一種のマツリを体験してみたかったんです。
それが今回の仕組みです。
月のない一夜に。
さて僕の中の日本を引き剥がし、もう一度新鮮に驚いてみる。
正直に言うとこれは一度ではとてもとても歯が立つものではありませんでした。
旅を続ける価値がありそうです。
実はわからないことだらけです。
知った気になっている自分を再び三度戒めながら、
登山をまた続けたいと思います。
もっともそんなごたくは、青山に足を運んでくださり
観てくださった方々とは何の関係もありません。
そんな風にみてくださいね。というのでは決してありません。
むしろまったく違う風景を風土を仕掛けを思い浮かべてくださった方がいるのなら、
それは作家にとって僥倖と呼ぶべきものです。
「月の居ぬ間に」という一度限りの舞台公演を観に来てくださったたくさんの方々、
関わってくださったたくさんの方々に
改めてお礼を申し上げます。
たった一週間ですけれど、同じ空気に一瞬触れてくださった方々。
本当にありがとうございました。
次回の機会は1年後広島。
2年後またDEE'Sとなります。
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それではまたどこかでお会いしましょう。
お元気で。