天気のいい今日は、仕事は休み。
朝からちょっと県内某所の山を歩く。
この山には、古い廃鉱山があり、
山の斜面のあちらこちらには未だ廃鉱道がぽっかりと真っ暗な口を開けている。
目指すはそこ。
僕はここにくるのは3度目。
千恵と二度訪れて、今回連れだされたお伴はいつものタキシタタツシ。
林道を歩く。
まだまだ歩く。
「結構しんどいですね。」
「そう?そんなにきつい感じでもないだろう?」
「いや、実は今朝出発前に10キロランニングしてきたんですよ」
ええ!なにやってんの!?馬鹿じゃねえの!?
足の筋肉がぱんぱんになるとちょっと嬉しいって・・
運動マニアってちょっと感覚が違うなあ・・・。
程なくしてたどり着く石ころだらけの斜面。
ズリである。
ズリとは要するに、採掘された岩石から価値のあるものだけを取り除いて、
その大量の残りかすを捨てた場所。つまり鉱山ゴミ捨て場である。
この鉱山では タングステンや錫、黄銅鉱なんかを採掘していたらしい。
さて、物色開始。
腹ばいになって石をより分ける。
ゴミとはいえ、その中には結構面白いものが混ざっていて、
それを見つけ出すのは宝探しのドキドキ感があって楽しい。
途中、お昼休憩をはさんで、少しずつ場所を移動しながら、
結局この場所で約4時間。
そろそろ集中力が切れて来たよ。
どれ、収穫のお披露目をしようかね。
お互いのエースを出し合って勝負だ。
「どう?」
「今日はこれですかね」
お、結構綺麗なの見つけたねえ。
僕はこの辺かな。
ここの水晶は透明感もあまりなくて、綺麗なものは少ない。
おまけに完全な六角柱の姿では出にくくて、欠片ばかり。
だから価値や魅力に乏しい、と、石好きの間での評判は芳しくないようだが、
それでも、ビギナーの僕なんかにしてみれば、
土の中でシャープな面にキラッと光が反射した瞬間はどきっとして結構嬉しい。
これは孔雀石。黄銅鉱の酸化鉱物。昔はこれを粉にして日本画の絵の具にしたらしい。
地味な色彩の早春の山中で緑青色がなんともみずみずしい。
うん、満足満足。必要な分だけパッキングして、持って帰るかね。
家で石のクリーニングするのが楽しみだ。
汗もかいたし、温泉に寄って帰ろう。
で、これがクリーニング後。
欠片とはいえ、それでも水晶は水晶。魅力的なものだ。
いつか透明なあのピシッとした水晶を見つけてみたい。
ほら、あの如何にも姿勢のいいやつ。計画立てて遠征しないと無理か。
とはいえ、近場のこのあたりの山にも鉱脈はたくさん走っていて、
多分こまめにあちこち歩き回ればそのうちもっといろいろ見つかることだろう。
トパーズやホタル石なんかも産出するらしい。
発見してみたいものだ。
これはつまりあれだ、山師ごっこなのだ。
山師といえば、ぱっと思い出す姿はあの人。
天空の城ラピュタのポムじいさん。
パズーとシータに地下で飛行石の燐光をかいま見せるあのシーン。
常田富士夫さんの声もまた良かったなあ。
ああいう、なんというか“探索する人”って、やっぱりついあこがれてしまう。
しかしとは言えだ、とてもじゃないが、
僕には今にも崩れそうな真っ暗な鉱道に侵入する度胸は無い。
あんな真っ暗な穴、覗いただけでぞっとする普通のチキンだ。
だからまあ、せいぜいポムじいさん気どりでハンマー片手に
尾根や谷や沢をたどる“ふりじいさん”だけどさ。