夜半に雨が上がり、放射冷却で急激に冷え込むと、
朝方、車の窓に幻の山岳の遠景が浮かび上がる。
なんとも綺麗だ。
こんな自然の造形は、趣や妙という言葉で愛でるにとどめたい。
なんでもかんでも、アートだね、とのたまうのは、
たぶん一般の人々のボキャブラリのなかで、アートという言葉が、
なんでもありを表現する便利な形容詞に
なり下がっているからに他ならない。
そう、例えば 「かわいいー」と同じ程度に。
もっとも現代美術の世界の現状は、
社会の中でその目的と存在の意義を見失い、
溺れながら迷走する、一人ぼっちのクジラのようだ。
その枠基準の緩さと、捨てきれないプライドの高さゆえに、
自らの輪郭の維持すら困難極まって久しい。
さて、ギャラリーズ・アイ
賛否両論の中終了した。
招待日をあわせ、3日間で来場者約3500人という数字から、
ファンの方々の興味をそそるに十分な企画であったことがうかがえる。
少なくとも、一石を投じることは出来たのかもしれない。
閑古鳥が鳴くよりはずっといい。
いろいろなもやもやしていた問題点がそれなりに洗い出された、
という点において、僕にとっては意味のある機会となった。
アートか工芸か?
作り手にとってギャラリーにとって、買い手にとって、
その境界線は有りや無しや?
線引きの意義は有りや無しや?
少なくとも、雲を下に見る岳の稜線で、
境界線という線を
僕は未だこの目で見たことがない。