眼前に聳え立ちはだかる壁。
その名は締め切り。
ギャラリーズ・アイ、そして雑誌「住む」の原稿。
どちらもあと1週間。
前者はともかく後者は現在も未だ全くの白紙状態。
一文字すらも出てこない。
あははは・・・・。
あ〜あ、何も浮かばない。
時すらも私を置き去りにして〜〜♪・・・。
こんな時にぴったりの4文字熟語は?!
そう!
頭がフリーズ状態になってどうにもこうにも動かなくなってしまったら、
僕の場合は、とりあえず車で家から離れてみる。
いつもなら山方面なんだけど、
路面凍結とか昨日の積雪とかが怖いので、
今日は海へ。
こちらへ越して来た時には、しょっちゅう足を運んでいたのに
ここしばらくは、海方面からはとんと遠ざかってしまっていた。
山より近いのにね。
とりあえず下を向いてぷらぷら歩く。
一昨日が満月で大潮だったせいか、波は荒いけど今日もよく潮が引いてる。
この石綺麗。これは・・・海鳥の右の翼の尺骨かな?
ウニの殻。全部ことごとく裏側だけ割れているのはなんで?
ああ、早朝に食通の鳥が中身を食べちゃった、が正解!
砂利を踏む音、波寄せる音、ふと磯の香り。
お、調子が出て来た。
目的もなく歩くだけで、調理前の初々しいクエスチョンにたくさん出会える。
まずはそういう単純な基本練習問題から、
自分の目と頭を動かすことを思い出して行く。
つまりリセットだ。
プラスチックの器に龍の柄?
なんかちょっと筆が上手すぎないか?
どうやらヘビガイのくっついた痕跡でした。
この石は・・・。なんか入っているよ。
化石だ。
貝殻らしきものがぎっしり。
こっちにも。
このあたり、確か中生代白亜紀の地層で海岸の岩が出来ているそうだ。
中生代 白亜紀といえば、約8000万年前。
はい、中生代を代表する化石といえば、
恐竜、アンモナイト トリゴニア貝 !
実際このあたりの海岸は、異常巻きアンモナイトの産出で有名らしい。
僕は見たことないけど。
とはいえ、この貝化石の入った泥岩だか頁岩だか、
そんなに古くは見えないけどなあ。
貝殻本体も比較的よく残っているし、
僕がずっと前に中世代後期の化石を山で掘った時は、
貝殻なんて全く残っていなくて、母岩の頁岩にスタンプみたいに
トリゴニアの殻の痕跡が見てとれるだけだったけど。
これはせいぜい新生代じゃないの・・・?
いや、実は保存がいいだけなのか?
うーん、ギブアップ。
ちゃんと調べないとぜんぜん分からない。
でも何が分かっていないかははっきりした。
それが大事。
この前のガーネット以来、
つい石を拾ってしげしげ見てしまう。
こんな海岸を埋め尽くすそれぞれの石ころの由来が知れたら、
きっと全く別物の風景がここに見えてくるんだろうなあ。
そんな特別な目を標準装備しようと思ったら、
まあ一つづつでもきちんと知って行くしかないんだな、きっと。
さて、不思議なもので、そんな役に立たない仕事以外の基礎ドリルに
それなりにまじめに向き合ってみると、
するすると頭はほぐれて来た。
この調子この調子。
天気も良かったし、貴重な時間を費やしてよかった。
さあ帰って、今度は手と頭を動かそう。