2014年07月14日

お山の参拝と木

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 天の岩戸にひきこもってしまった、アマテラス。
しかし、その外で開かれた賑やかな神々たちの宴の途切れぬ笑い声に、
ちょっとだけ外の世界が気になった。
岩の戸にそっと手をかける。
しかしまだ外の様子はわからない。
ぐっと手に力を入れると、ごごご、と低い音を立てて
戸が動く。
歌声と笑い声はその薄い隙間からなだれ込んでくる。

私が失意の果てに閉じこもっておるというのに、
この楽しげな様子はどうしたことか。

しかしその様子はまだ見えない。
さらにぐっと力を込める。
ひんやりとした夜気とともに、なだれ込む、
アメノウズメノミコトのエネルギッシュでコミカルな舞姿。
やんやの喝さい。
カケコー!一斉に鳴き出す長啼きどりたち。

その時。薄く開いた岩の隙間から、岩戸の中へとにゅっと
差し込まれたものがある。
ごつごつとした木の根のようなものは手であった。
みしみし!
その指はみるみる岩の戸をしめつけ
両の腕に岩を締め砕かんんばかりの、力がみなぎったかとおもうと、
一瞬驚いて後ろに飛び退ったアマテラスの眼の前で、
岩の戸は軽々と持ち上げられた。

たくましい腕の主が、その時
どりゃー!っといったのか、そいやー!叫んだのかは定かでないが、
アメノタジカラオの怪力によって、岩はそのままひゅーんと
どこかへと投げ飛ばされてしまった。

アマテラスの復活は再び地上に明るい光をもたらしたのであった。

それが天の岩戸伝説のクライマックスのくだりである。

それで、投げ飛ばされた岩の戸がその後、何処に落下したのかというと、
戸は中空を飛び、日本のだいたい真ん中あたりにどすんと落ちた。
今の長野県の北にある、戸隠山がそれであるという。

なんともスケールの大きな話だ。
神様でかい!

上の写真の社屋のバックにそびえるのがその戸隠山だ。
のこぎりの刃のように荒々しい岩のむき出しの山肌。

さすがにそれに登ろうとは思わなかったが、
長野県 戸隠、そのなんとも神秘的な神話の山には一度行ってみたかった。
御山の入口的な宝光社から、最も高い位置にある
奥社、九頭龍社まで合計5社から成るのが戸隠神社だ。

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これまで歩いた数多くの参道のなかでも、
間違いなくトップ3に入るだろう。
すばらしい気の流れるまっすぐな奥社への道。
清い、は 気良い と同義であろう。
緩やかにずっと登って行く歩きやすく清められた道。
道の両側は、ブナやミズナラ、トチなど
古木のそびえたつ原生林。山自体が鎮守の森だ。
山門を過ぎると広葉樹の風景はがらりと変わる。
現れる巨大な杉並木。


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400年前に植林されたものだそう。
参拝者がとても小人に見える。

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天の岩戸伝説よりもずっと古くから祀られていたのが、九頭龍大神という土地神らしい。
龍神系の山なのだ。
現在に至るまで、水清く信仰の要として人々に踏みしめられた土地というのは
やはりそれなりにちゃんと理由がある。
人出が多く観光地化されてしまって、まったくだめだ。という声もあるだろうが、
そこを歩く人々に漠然とでも信仰心というものがないかといえば
そんなことは無いと思う。
老若男女、それぞれ汗をかいて、お山に登り、拝殿で手を合わせ、
こうべを垂れる。
思惑や身なりはそれぞれ違えど、
やはり目的は参拝≠ネのだ。
それを僕は、信仰の堕落とは思わない。
信仰の根本は強制ではなく自制だ。
こうした清い場所を歩きながらゴミを平気で捨てたり、
森の苔を踏み荒らし若木をへし折って持ち帰ろうとする人も
まずいないだろう。
教えられることではない。
そうした無言の自制が
日本人の心根に流れているのであれば、
スタイルや思いはそれぞれでいいんじゃないかな、
と思う。

ただ誠に残念ながら、
日常のなかでも、メディアから流れてくるニュースの中にも
そんな清いことに触れる機会は少ないのだけれども。

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こちらは最初の宝光社の石段。登りがいがあった。

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こういう石の小さな祠の並ぶ様にはぎゅっと掴まれる何かがあるなあ。

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あ、クジャクチョウだ。

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戸隠といえば蕎麦でしょう。下調べしてなくて、適当に入ったけど
そこそこ美味しかった。


その日は、戸隠から南下し、信濃大町の近くで切られた木を
戴きにとある場所に伺った。
実はそっちが主目的。
白樺とヤマザクラのいいのがあったので、お言葉に甘えて
車に積み込む。

秋の木偶講座にはこの白樺を持っていこうかな。












posted by 前川秀樹 at 20:31| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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