2014年07月30日

八月ルビジノ

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蓮の花が盛りです。
昼過ぎには残念ながら、閉じてしまう花が多いのですが、
それでも、沢山の花が咲く一角には香りがほんのり漂います。

ルビジノ、木陰以外は涼しい場所はありませんが、
蓮花見にでもお出かけください。

8月 2日(土)3日(日)4日(月)5日(火)

がオープンです。

お待ちしています。
posted by 前川秀樹 at 08:14| ルビジノ情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

流れているのは河か水か。


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河が流れている。
否、
河は流れずただそこにある。
流れているのは水だ。

この道は何処に行くのだろう。
否。
道は何処へも行かない。
道の上をただ人が行くのだ。

日暮れの橋の上で
いい感じに、ひねくれてみる。

明日は梅雨明け直後の酷暑の茨城へと帰る。
名残惜しいが、十分楽しんだ、と
思うことにしよう。

そう言えば札幌では、札幌国際芸術祭?
なるものが開催されているようだ。
坂本龍一がなんとかディレクターを務めたことで話題だったが、
急きょ、休養のため参加できなくなったというあれだ。

知ってはいたが、
札幌まで行こうとは思わなかった。

山とか虫とか、こうやって河を見ている方が、
なんだか僕は元気になれるからだ。
僕は刺激をこういうものから得たいと思う。
言葉からではなく、世界に触れて世界を知りたいと思う。

 加工も選別もされる前のそれは、
噛み砕くのにも骨が折れ、消化にもやたらと時間がかかり、
時には消化不良を起こす。
栄養になっているのか、なっていないのかすらも
よくわからない。
しかし、それは、少なくとも
世界に直に触れた、という実感を残す。
それが感動の種だ。

感動は常に激しく訪れるものとは限らない。
それはむしろ、地味で、ひそやかで、そして鋭い。
しかし、僕らは、そんな、
分かたれる前のものとの出会いに
気が付かなければならない。
飲み込んだ、分からないものは、
やがて醸され、
物語を生みだし、
自分の心を動かすのだ。
それが感動だ。

そういうものしか、
ほんとうに
人には伝わらない。

と僕は思う。



さて、暑さで効率は悪いが、
負けずに頑張ってまた作ろう。





posted by 前川秀樹 at 01:34| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月29日

本当の盛夏を知らなかった。


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 これまで、採集を目的とした北海道遠征は、
6月と、9月 10月
印象として、さほど昆虫の層が厚いとは思えなかったし、
種類も個体数も、まあ現実にはこんなものか、
と納得しかけていた、
しかし、短い北の大地の夏がいかに爆発的に華やかなものなのかを
今回初めて思い知った。
7月の北海道はにぎやかだった。

例えば、ちょっと林道を歩いてみただけで、
ミズナラの幹はこんな具合。

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なにこれ?
昼間っからこんななの!?これが普通?
ここでは、平地でも、本州では山地性のミヤマクワガタが基本らしい。
ノコギリクワガタや、コクワガタ、スジクワガタ。
居るにはいるが、少数だ。
珍しいアカアシクワガタが多数みられるもの嬉しい。

とはいえ、実は僕はクワガタ、カブトムシはどちらかというと守備範疇外だ。
それらしい木があると、癖のように探してはみるし、
賑やかに樹液にたかるさまを見るのも楽しい。
手で感触を確かめたくて、捕まえても見る。
だからと言って、自分用に採集して持ち帰ることはほとんどない。

子供の頃のあのドキドキを思いだす。そういう対象である。

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バナナトラップというのも本で知って初めて実験してみた。
昼間、高温の車内でバナナを発酵させ、夕方に木肌に塗りつけておく。
強烈な発酵臭に樹液性の昆虫がおびき寄せられる。
というもの。

しかし、僕は夜には不覚にも寝入っててしまい、
見まわりをさぼり、朝になって行ってみたら、
あら、まあ それなりにちゃんと・・・。
効果はあるんだなあ。


そうだ、明日会うミウラさんちの一久にお土産にしよう。
もし一緒に行ってなにも取れなかったら、保険にすればいいしな。

とおもって、適当に摘んで行ったら、こんな量に、

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結局、幸いにもその保険は使われなかったのだけど、
少しだけ、また別にお土産にして、あとは逃がしてしまおう。



さて、
その、一久との虫取りである。
夜はライトをやるからいいとして、昼間はなにを採ろうかな。
何を喜ぶだろか?と思案した結果、
とりあえず定番のオオセンチコガネにした。

早朝、宿からほど近い、程よい林道に車を走らせ、
何か所かに、ごろんごろんした固まり状の馬糞と牛糞を仕掛けておいた。

お昼に待ち合わせて、見に行ってみると。


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やや!固まりがなんだか平らに慣らされている。
たった4時間ほどしかたってないのに。
恐るべき分解能力。
見ればおなじみの、緑色のキラキラが、人影に気づいて散らばってゆく。
糞を軽くどけると、いるわいるわ!
なんともすごい数である。
これまで僕が見た中では、一番の量だ。


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ほら、早く捕まえないと逃げちゃうよ。
ピンセットじゃなくて、手でいいよ。
洗えば平気だから。


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いっぱい採れたねえ。

クワガタにはかなりびびり気味の一久も、オオセンチのきらきらをみて、
きれいだねえ。嬉しい。
となんどもつぶやく。

なあ、そうだよなあ!きれいだよなあ!宝石みたいに。
この共感がおじさんも素直に一番嬉しい。



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フキも大きい。大人に無理やり着させられて、複雑な表情の幼稚園児(笑)
コロポックルだ、かわいいよ。



 二人と別れて再び一人でニセコ方面へ。
ニセコは基本、高原地帯なので、山地性の花が満開だった。
オオハナウドもその一つ。
白いレースのように美しい。



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オオハナウドの花は、ハナカミキリの仲間やハナムグリ達の好物。
これは、、はじめてみるハナカミキリ。何だろう?

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おお、アオアシナガハナムグリ。これもはじめてみた。
居るところには居るんだ。

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これは普通種、アオハナムグリかな、鮮やかな緑色に見入ってしまう。

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このノリウツギにもいっぱい来てるなあ。
アカハナカミキリにマルガタハナカミキリ。

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これはノコギリカミキリ。


採集旅行は日が経つにつれて、採集標本がたまってくる。
夏の車内の高温ではあっというまに虫は死んで、あっという間に腐り始める。
そうなると、せっかくの採集個体が綺麗な標本にはならず
無駄になる。
昆虫は、高温には弱いが低温には驚くほど強い。
冷蔵庫に入れても、休眠状態になるだけで死ぬことはあまり無いので、
新鮮さは保たれる。
だから、いかにして保冷をしつつ運ぶか、というのが、
夏の採集の大きなポイントになる。

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死んでしまったらば、仕方がないので、そのまま、腐らせず、
なるべく乾燥していただく。
ホテルの部屋の窓際で、まさか客がこんな作業に没頭しているとは
フロントも思うまい。


それにしても、7月の北海道。
興奮するに十分な要素が目白押しだった。
目標の狙いを変えれば、また別の層を覗くことができるに違いない。
それほど、何もかも一遍に動き出す、という感じだ。
これが、北の夏なのだ。

さて、残すは8月となったが、
きっとまた、違う舞台装置が待っていることだろう。
さて、それはいつになるのか。









posted by 前川秀樹 at 23:56| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

移動だけにとどまらない日。

今日は移動日のようなそんな日。
移動が多いと何となくその時間が無駄にも思えるけど、
車窓からはそれなりに発見もあって楽しい。
この道は何処に抜けてるんだろか?
と、ハンドルを切り、分け入って確かめるてみるのもいい。
林道は道路地図にはなかなか載ってないからね。
そうやって、助手席の道路地図には、どんどん新しい道や、
発見が書き込まれてゆく。

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後方羊蹄山は今日も雲。てっぺんまで綺麗に見える日と
半々くらいだったかなあ。

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もう、ここは通ると必ず立ち寄る。
喜茂別にあるチーズ工房タカラ
昨年、初めて立ち寄った。
見晴らしの良い街道沿いに牛が見え始めたとおもったら、
とつぜん現れたこのアイキャッチのユルさ。
自家製チーズ販売、とか控えめに脇に書いてある。
こりゃ、なんか面白いに違いない、とふらりと寄って、
美味しそうなチーズを何種類か買ってみた。

これが大当たり。
そうそう、こういう熟成の進んだ臭いチーズってなかなか日本で食べられない。
どれもすごく味に工夫があって、食べる時期によっても味がどんどん変わる。
今回はこれ。

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ドライトマトとかオイルとかいろいろ混ざったクリームチーズ。
その名もタカラとソガイ。
それと、カチョカバッロの燻製。
深い奥行きのある味わいだ。

ちなみにソガイとはトマトを作っているのがソガイさんだからだそうな。
ネーミングもなんだかユルい。
パンフをもらったら、おおざっぱな地図が出ていて、だいたいこの辺。と矢印がしてある。
とにかく徹底してユルい。
でも味は、なかなかどうしてユルくない。
このギャップが狙ってなのか偶然なのか、はたして。

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いい小屋もちらほら。
前後の車のスピードが速く、なかなか止めて撮影できないのが歯がゆい。

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おお、良くできた恐竜だなとおもったら、
道の駅なのか。

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ちょうどお昼時、でもあまり時間をかけたくはない、
なんか運転しながら食べられるもの、、、。
決めた。ゆがいたトウモロコシとサクランボにしよう。
シンプルだけど、どちらも朝摘みの新鮮なお昼、考えたら結構贅沢かもしれない。



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ちなみにこちらは、また別の日、同じ道の駅での昼飯。
漂う香りにつられ、あれもこれもと屋台をはしごしてしまった。
手前のは、野菜、キノコ盛りだくさんの汁もの、200円。
その名も大滝汁。地名なのかな。
売り子をしていたオヤジに、


「キノコ汁一杯ください」

と200円出したら、

「いや〜。お客さん、勘違いしちゃってるかなあ。これキノコ汁じゃないんだよねえ」

うわ、なんだか面倒臭いおやじ?
ああ、ほんとだ商品名大滝汁って書いてあるな。
でもなんか言い方にイラっときて

「どっちだっていいよ。いい匂いだから、これがたべたいんだよ。」

とぶぜんと大鍋を指さしたら、
むこうもぶすっと無言になって、なみなみと注いでくれた。
ここぞと自慢したかったのに遮られ、さらにいい匂いと褒められて、
客に下げられて上げられて、
ちょっと酔いそうだったのかもしれない。

味はすごくおいしかったよ。オヤジ。
だから黙って注いでくれればいいんだよ。





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標高の高い峠を越える。
空気がひやりとしてきた。

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これは、たぶんあれだ、元スキー場なんだ、きっと。
雪深い場所の建物の倒壊は、容赦がない。
すこしでも柱の重心がずれたり、屋根が痛んだりするのを、
長い冬の雪は見逃してはくれない。
みしみしみしと、上からものすごい圧力をかけて、
押しつぶす。
夏に見るとそれが、
姿の見えない巨人が今も乗っかっているかのような奇妙な様子に映る。
夏はそんな巨人があっちにもこっちにも居る。






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おお、薪積み職人の美意識が冴える。

が、こういうのは気をつけなければいけない。
そう、おもしろくてもこれはアートではない。
何でもかんでも、まるで現代アートだね、と例えてしまう風潮に、
昔からぼくは、ちょっと警戒している。
おそらく、そういう例えをするとき、その人は、
じゃあ、アートとアートっぽいモノとは本当はどこが違うの?
そんな問いについては考えない。
そもそもそれが違うものだ、とは思いもしない。
 こういう、ちょっとした風景のひずみを見出して、
なんでもかんでも、アートのフィルターをかけてみてしまうのは、
現代アート症候群とでも呼ぶべき、現代疾病なのじゃなかろうか、とも僕は思う。
そして自分もまた病んでいるのか否か、
常に自己診断する必要がある。

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目的地に着くまでにうろうろ寄り道をしすぎて、
日が暮れて来てしまった。
採集旅行のはずなのに、今日の虫はゼロ。
代わりにいろいろと面白げな種を採集できた
だからよしとしよう。

お昼がモロコシだったから、
程よい空腹感を覚える。
夜は宿でがっつり食べようかな。





posted by 前川秀樹 at 20:58| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

ダイコククエスト

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ダイコクコガネという、立派な角を持つ甲虫がいる。
堂々とした体躯は漆黒で、まるで武将の兜のようであり
蒸気機関車のような力強さを感じさせる実に魅力的な姿の昆虫だ。

僕は子供の頃、地元の愛好家の方に標本を見せていただいた。
ぎゅっと詰まったエネルギーの塊のような造形に
衝撃を受けた。
が、40年近く前ですら、兵庫県ではもう見られないと
言われていた希少種だったので、それはもう過去に生息していた、
いないものなのだ、
と思い込んでいた。


大人になって、全国的には未だ生息している昆虫だということを知った。
この目で見てみたい。
と思った。
針に刺さったのではなくて、
手の中で動くそれを。

ダイコクコガネは牧場などの牛馬糞を餌とする。
情報を集めてみるとやはり全国的に激減している種で、
ここ酪農王国の北海道でも、
「絶滅の危機が増大している種」レッドデータの絶滅危惧U類に分類されている。

実際に場所を見に行ったのは昨年。
北海道某所の馬の牧場と牛の牧場だ。
案内してくれたのは、現地にお住まいの獣医、ミウラさん。
その時には広い牧場内の、糞を目指してそぞろ歩いたが、
結局まるで生息の痕跡を
見出すことは出来なかった。
やっぱりそう簡単にはいかないか、、、。

しかし、その後も続けてずうずうしくミウラさんに、
現地情報を集めていただいた。
そのなかから、ある程度有力な場所が浮かび上がって来た。

先日、2年越しのリベンジのために北海道に行って来た。
そのあたりに滞在予定は1日半。
糞を探すのは、ほどほどにして、
方法はライトトラップに絞ることにした。
日暮れの迫る中、ミウラさん運転の車で、
あそこでもない、ここでもない、と迷走の結果、
ようやく選んだ場所がここ。

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遠くに見えるのがどうやら放牧場のようだ。
手前にも牛の姿がさっきまでは見られた。
光も届く。来るとしたらここでしょう!

日暮れが待ち遠しい。
期待に満ちたいい時間だ。

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暮待ちの間に、夕飯食べましょう。
ミウラさんとご長男の一久君。
携帯食のインスタントだけど、ほら外で食べるとなんでもそれなりに美味しいでしょ。

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7:00pm 点灯。
周囲の光も少なく、風もなく、月も雲に隠れている。
これ以上ない好条件。
30分も経たないうちに来るわ来るわ。
乱舞である。

蛾の。

小さな糞の分解者、マグソコガネがゴマをばらまいたみたいに
白布の上を歩きまわっている。

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ああ、クワガタが来始めた。
ミヤマクワガタの雌。

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2時間ほどもすると雌クワガタだらけ。
しかし本命未だ飛来せず。

最初ははしゃいでいた一久もとうとう眠気でダウン。
まあ幼稚園児にしてはものすごく頑張った。えらいぞ。

うーん、やっぱりこの方法でも駄目かねえ・・。
いないのかなやっぱり。
大人チームにもそろそろ疲れが見え始めたころ。

お!?

おお!?

クワガタにしてはやけに太短いシルエットが。

ミウラさん!ミウラさん!来た!来ました!居ました。本当に。

ついに来ました。立派な角を持った雄個体、記念すべき第1号。




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写真は後日撮ったものだけど、
手の中でうごめく感触は忘れられない。
やはり、死骸とは別物の存在感。
独特の黒光りがヘッドライトを反射する。
手に取ってすぐには、擬死といって、手足を縮め
動かないが、しばらくすると、へらのような平たい手足で
僕の指の間をぐいぐい掘り広げ隠れようとする。
すごい力である。
こちらも負けじと指に力を入れる。
ああ、生きている。

いやあ、ほんとに居ましたね。

ここまで2年越しでしたね。

なんだか、40半ばのおっさん二人で
こんなことにうきうきドキドキできるなんて、そのことが面白い。
知っている人にはきっと、些細なことで、
興味のない人にはこんなくだらないことはないだろう。

しかし、このたぐいの感動はあくまで体験した個人にしか味わえない。

決して難しいタイプの謎ときクエストではないのだろう。
しかし、情報から予測を立て、想像をしながら徐々に正解に至る行為は
やはり年齢に関係なく、この上なく面白いものなのだ。
モノが手に入る喜びよりも過程が楽しい。

結局その夜はもうそれで満足をして、
消灯。閉店をした。
ミウラさん、お付き合いどうもありがとう。


が、それで終わらない。
翌日。
さらにもう一か所でライトトラップを試みた。
今度は僕一人だ。
こちらは昨晩の場所から車で1時間ほどの距離だが、
情報は皆無。
ただ、昨年、ここは居るんじゃないかなあ、と
目星をつけておいた場所だ。

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元牧草地らしいが、場所によっては草も深く、
今も乗馬トレイルなんかをやっていると見えて、馬糞はある。
が、道は無い。
広範囲に光を照らすことのできる
丘の上まで車で行くには、
馬の通ったあとを慎重かつ正確にたどるしかない。

四駆でもない軽自動車にはちょっと厳しかったが、
まあ、どうにか日没までに良い場所にたどり着けた。

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さて、準備完了。今夜はここで一人ご飯。

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エゾシカの若い雌が、こちらを警戒している。
普段は彼らのホームグラウンドなのだろう。
迷惑そうだ。

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さて点灯ー。

昨夜に比べて、丘のてっぺんだったせいか、
風があって、ライトに飛来する虫たちはことごとく
オーバーラン。

にしても。
暗いな。

見通しのいい場所での闇、というのはこれまた独特のこわさがある。
シカの警戒啼きもフクロウの啼き声も、
遠いのか近いのか全く分からない。
手持ちのライトに、立木が照らされるわけもなく
光はただ闇に飲み込まれるだけだ。
ごく遠くにチラチラと見える、集落の灯りにちょっとホッとする。

そうこうするうち、
開始1時間半。
お!見覚えのある丸い背中。
やりました。雌が最初の個体。
その後も1時間に一頭ほどのペースで飛来、
結局その夜は3頭採集できた。



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場所の目星が当たるのもまた、嬉しい。

3頭目が来たのが10時半ころ。
さて、もう少し粘ってもいいけどどうしようかな。
と、懐中電灯を車の方に向けたとき、僅かに異変を感じた。

あれ?

眼鏡曇ってる?

違うか。違うな。

じゃあ、なんで?
と思いながら懐中電灯を麓の方に向けて、愕然とした。

帰り道見えないよ!真っ白。
地面ばっかり見てて、まるで気が付かなかった。

ガスである。
丘とはいえ山地のこと、あっという間に背後の山から
ガスが降りてきていることに全く気が付かなかった。

麓の方向は分かっている。この丘陵地帯への唯一の進入路だ。
でも深い草の方にうっかりハンドルを切って、
出られなくなる可能性は高い。
普通のオンボロ軽自動車なのだ。

うわー。
どうしよう。

落ちつけ落ち着け、自分。深呼吸。
それからの撤収の早かったこと。
ライトの熱が冷えるのもそこそこに
コンテナに詰め込み、とにかく車に全部積み込む。
忘れ物確認よし!ゴミよし。

車はあらかじめ帰る方向に向けてあったから、
エンジンをかけて、ライトをつける。
すぐ手前に馬の道が見える。

方向よし。そろりそろりと発進させる。
しかし、すでに推定視界10メートル未満。
地面むき出しの馬道もすぐに見失った。

車から降りて、懐中電灯で捜索。
で、また方向を決める。とりあえずこっちに10m進む。

多分こっち、大丈夫。
でもそれも思い込みなんじゃ・・・。
引き返して、ガスの晴れるのを待つか?
いやいや。
不安はどんどん募る。
明るい時とはまるで別の場所にいるようだ。

もし、ぬかるみやくぼみにはまって動けなくなったら、
JAF?

いやいや待て待て。

いい大人が、虫取りでこんな夜中に
JAFに助けられるのでは、恥ずかしすぎる。
仮に電話がつながったとしても、
まず居場所の説明は困難を極める。
そもそも自ら好んでそういう場所を選んだ。

「はい、JAFです。今どちらですか?」

「ええと、、今、なんか丘の上でー。住所は分からなくて、は?近くに見えるものですか?、、
ええと、あ、ガスです」

これでは痴ほう中年だ。
こんな電話を受けた人はどんな相手を思い浮かべるだろう。
いくらあこがれの獲物とはいえ、
この3頭とその恥では代価が釣り合わない。

何度か車を降りて、進んで、を繰り返すうち、
車のライトがようやく、見覚えのある
人の道をわずかに照らし出したときの安堵感と言ったら。

よかった。合ってた。
でもまだ膝は笑ってるけどな。

幸い、林道ではガスは嘘のように晴れており、
程なくして宿の明かりが見えた。

大黒クエスト、とんだオチがついた。

その夜の宿の温泉は沁みた。









posted by 前川秀樹 at 19:20| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月14日

お山の参拝と木

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 天の岩戸にひきこもってしまった、アマテラス。
しかし、その外で開かれた賑やかな神々たちの宴の途切れぬ笑い声に、
ちょっとだけ外の世界が気になった。
岩の戸にそっと手をかける。
しかしまだ外の様子はわからない。
ぐっと手に力を入れると、ごごご、と低い音を立てて
戸が動く。
歌声と笑い声はその薄い隙間からなだれ込んでくる。

私が失意の果てに閉じこもっておるというのに、
この楽しげな様子はどうしたことか。

しかしその様子はまだ見えない。
さらにぐっと力を込める。
ひんやりとした夜気とともに、なだれ込む、
アメノウズメノミコトのエネルギッシュでコミカルな舞姿。
やんやの喝さい。
カケコー!一斉に鳴き出す長啼きどりたち。

その時。薄く開いた岩の隙間から、岩戸の中へとにゅっと
差し込まれたものがある。
ごつごつとした木の根のようなものは手であった。
みしみし!
その指はみるみる岩の戸をしめつけ
両の腕に岩を締め砕かんんばかりの、力がみなぎったかとおもうと、
一瞬驚いて後ろに飛び退ったアマテラスの眼の前で、
岩の戸は軽々と持ち上げられた。

たくましい腕の主が、その時
どりゃー!っといったのか、そいやー!叫んだのかは定かでないが、
アメノタジカラオの怪力によって、岩はそのままひゅーんと
どこかへと投げ飛ばされてしまった。

アマテラスの復活は再び地上に明るい光をもたらしたのであった。

それが天の岩戸伝説のクライマックスのくだりである。

それで、投げ飛ばされた岩の戸がその後、何処に落下したのかというと、
戸は中空を飛び、日本のだいたい真ん中あたりにどすんと落ちた。
今の長野県の北にある、戸隠山がそれであるという。

なんともスケールの大きな話だ。
神様でかい!

上の写真の社屋のバックにそびえるのがその戸隠山だ。
のこぎりの刃のように荒々しい岩のむき出しの山肌。

さすがにそれに登ろうとは思わなかったが、
長野県 戸隠、そのなんとも神秘的な神話の山には一度行ってみたかった。
御山の入口的な宝光社から、最も高い位置にある
奥社、九頭龍社まで合計5社から成るのが戸隠神社だ。

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これまで歩いた数多くの参道のなかでも、
間違いなくトップ3に入るだろう。
すばらしい気の流れるまっすぐな奥社への道。
清い、は 気良い と同義であろう。
緩やかにずっと登って行く歩きやすく清められた道。
道の両側は、ブナやミズナラ、トチなど
古木のそびえたつ原生林。山自体が鎮守の森だ。
山門を過ぎると広葉樹の風景はがらりと変わる。
現れる巨大な杉並木。


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400年前に植林されたものだそう。
参拝者がとても小人に見える。

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天の岩戸伝説よりもずっと古くから祀られていたのが、九頭龍大神という土地神らしい。
龍神系の山なのだ。
現在に至るまで、水清く信仰の要として人々に踏みしめられた土地というのは
やはりそれなりにちゃんと理由がある。
人出が多く観光地化されてしまって、まったくだめだ。という声もあるだろうが、
そこを歩く人々に漠然とでも信仰心というものがないかといえば
そんなことは無いと思う。
老若男女、それぞれ汗をかいて、お山に登り、拝殿で手を合わせ、
こうべを垂れる。
思惑や身なりはそれぞれ違えど、
やはり目的は参拝≠ネのだ。
それを僕は、信仰の堕落とは思わない。
信仰の根本は強制ではなく自制だ。
こうした清い場所を歩きながらゴミを平気で捨てたり、
森の苔を踏み荒らし若木をへし折って持ち帰ろうとする人も
まずいないだろう。
教えられることではない。
そうした無言の自制が
日本人の心根に流れているのであれば、
スタイルや思いはそれぞれでいいんじゃないかな、
と思う。

ただ誠に残念ながら、
日常のなかでも、メディアから流れてくるニュースの中にも
そんな清いことに触れる機会は少ないのだけれども。

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こちらは最初の宝光社の石段。登りがいがあった。

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こういう石の小さな祠の並ぶ様にはぎゅっと掴まれる何かがあるなあ。

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あ、クジャクチョウだ。

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戸隠といえば蕎麦でしょう。下調べしてなくて、適当に入ったけど
そこそこ美味しかった。


その日は、戸隠から南下し、信濃大町の近くで切られた木を
戴きにとある場所に伺った。
実はそっちが主目的。
白樺とヤマザクラのいいのがあったので、お言葉に甘えて
車に積み込む。

秋の木偶講座にはこの白樺を持っていこうかな。










posted by 前川秀樹 at 20:31| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月03日

7月ルビジノ

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じめじめむしむしが続きますが、
これはいたしかたありません。

7月ルビジノ。5日(土)6日(日)7日(月)8日(火)
がオープンです。

蓮の花にはもうあとわずかですが、
たっぷりの水を吸い上げてもりもりと盛り上がる蓮田の勢いは
綺麗でなかなかいいものですよ

お待ちしています。
posted by 前川秀樹 at 16:20| ルビジノ情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年07月01日

思い立って。

北海道 6月 (44).JPG

個展が終わってしばらく経つのに、
何かとばたばたといろいろなことがあって、
なかなか制作のペースが取り戻せない。
ちょっと分かりやすいリセットが必要だ。
それに梅雨のじめじめとか、もろもろからちょっと遠ざかりたくなった。
時間もとれそうだし、
よし、明日出かける?
明後日からなら。
そうしよう。
今からチケット取れるかな。
とにかく安くお得に、が目標だからね。
それで、いつもの北の方面へ。

北海道 6月 (55).JPG

残念ながら抜けるような青空は臨むことはできず、
後方羊蹄山もずっと雲の中。

北海道 6月 (5).JPG

装備はちゃんと持ってきてるし、
こっちなら、どうにか歩けるかな、
とニセコ最高峰、アンヌプリに登ることにする。
ところが、こちらもガス。
気温14℃。寒い

北海道 6月 (27).JPG

頂上もこの通り、残念ながらな〜んも見えない。
ま、こんなものかな。

すっきり澄んだ高地の空気も悪くはなかったのだが、
眺めがなあ。

それなら、と翌朝は、ブーランジェリー・ジンの美味しいパンと
タカラでチーズを買って、海の方まで移動。

海に近い森を歩く。
ここ白老には初めて来た。

北海道 6月 (47).JPG

北海道 6月 (74).JPG

北海道 6月 (84).JPG

北海道 6月 (93).JPG

北海道 6月 (63).JPG

うん、やっぱり森はいいぞ。
こちらは今が新緑。
しっとりと水気を含んだ空気にむせそうになるほどだ。

北海道 6月 (68).JPG
アイヌの博物館の湖沿いの食堂でお昼。

北海道 6月 (66).JPG
伝統的なアイヌの汁ものの定食だって。
素朴だけど結構おいしい。

北海道 6月 (69).JPG
ヒグマのはなこ″に餌をあげてみたり。
雌なのに大きいなあ、雄はもっとすさまじい大きさだった。
檻の中ではまあかわいらしいけど、
林道でこんなのに出会いたくはないなあ。
試しに博物館の迫力のあるハクセイと向き合い、中腰で構えてみる。
むりむり!
10mあっても、一瞬で詰められそう。

北海道 6月 (39).JPG

土産には新鮮な白アスパラも沢山買えたし、
そうだ、今夜は焼き魚が食べたいな。
美味しいものと温泉。
思いつきにしては、程よい気分転換にはなった。
計画的なのもいいけど、思い立って、
という気軽さも捨てがたい。
さて、制作モード準備完了。
心機一転
また励みましょう。







posted by 前川秀樹 at 19:50| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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