2014年03月30日

天上の庭へ

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雲ひとつない蒼穹の下、雪原を歩く。
この日の気温はこんな山の上でも16度
防寒着が邪魔になるほどの最高の気候だ。
天上の庭に出かけた。

僕の修羅場が一時過ぎて、
「山に行きたい」
といったら、いつものサンペイ君から、
じゃあ金曜日朝6時集合、との返事。
行先は、どこなんだろ、よくわからない。
でも案内は任せて安心。
両神山以来である。

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あれが磐梯山です。
ほう。立派な山岳の顔をしているね。
間の抜けた感想である。

リフトを降りて、さて、歩きましょう。
あの山のふもとまで行きましょう。
今回は、登山じゃなくてハイキングですから。軽いですよ。

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スノーシューも借りて。
これがないと、ズボーっと股関節まで雪を踏み抜いてしまう。
地面に近いところには空洞がある。
山も雪解けを迎えているのだ。

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磐梯山は猪苗代のほうからみると器量よしの山なのに、
北向きの裏側はこんな風にざっくりとえぐられたような、荒々しい
岩肌がむき出しになっている。今回は噴火の内側を歩いていくのだ。


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冬山に道はない。歩けそうな好きなところを歩くのだ。
厚く積もった雪は、
夏には木立や沢や礫でにぎやかで複雑な山肌を、
禅寺の庭にように、すっきり簡潔で研がれた景色に変える。
もちろん、規模は、作られた庭と違い原寸大だから
自分のほうが縮小倍率を掛けられたような奇妙な気になる。

なるほど、構成要素の少ない簡素な風景というのは、
とりたてて、特別な集中力など要さなくても
容易に世界への干渉と内省へと自分をいざなってくれるものだ。
だから、雑音の少ない簡素は退屈をもたらさない。
こんなに静かなのに、
むしろ今、ここを満たしているのはある種のスリルなのだ、と感じる。
スリルにただゆだねる。そのことのなんと心地よいこと。
サンペイ君が雪山をこよなく愛するのがなんとなくわかる気がするな。


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今回のコースの最奥、氷瀑。
流れ出る硫黄分で黄色くまだらに染まっている。
もりもりと迫力のある造形物だ
が残念ながら、ちょっと季節が遅かった。
解けてサイズダウン。

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ん、音がする。おお、雪崩ですよ。
ほんとだ!
遠くて写真ではぜんぜんわからないけど、
土砂と雪の混ざった細い流れが。
あんなのでも、くらったら怪我じゃ済まないだろうなあ・・。
あの下あたりが危険地帯なわけだね。

危険地帯のふもとから山は急激に傾斜を増し、壁のようにそそり立っている。
残雪はその粗面にかかる大きな白い梱包幕のようだ。

ぎりぎりまで行ってみますか。
それは是非、と
きつい登りをしばし。

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幕のふもと、安全と思われるぎりぎりのところで
リュックを下す。
季節をちょっと外れたせいか、ここまで来る登人などだれも居ない。

ぱしーん。かろん、ころろん。

どこからともなく絶えず、
遠雷のような乾いた音が響く。
落石である。
雪解けは山肌に緩みをもたらすのだ。
ところが、その方向に目を凝らしてみても、
動くものは発見できない。
反響で音源が特定しづらいこともある。

また、ぱしーん。
目を向ける。
でも視えない。
意外と小さいものでも、音だけは立派なのか、
あるいは、山の向こう斜面なのかも。

こんなに見晴らしがいいのに、
音だけ、というのはなかなか興味深い。
古杣(ふるそま)とか空木倒しとか天狗倒し?
あれは、大木の折れる音か。
でもそういう音系の妖怪って、
きっとこういうところからの創作なんだな。
正体は落石だとわかっていても、どこかに“不思議”は残る。
視えないのだから。
ほんとかな?と疑える自分がまだ居る。
そのわずかな心のゆとりにちょっとホッとする。

落ちる石を探すのはあきらめて珈琲を片手に
沈黙。

こつーん。ぱしーん。

それだけをいつまでも聴く。
で、時折、ポツリポツリと
とりとめもない話。
なんだかとてつもない贅沢をしているような気になってきた。

ああ、これはいつまでも居られるね。
まずいまずい。
これだけでご飯3杯いける、となってしまうくらい
深入りする前に
こういう場所に捉まる前に、
降りよう。降りたほうがいいね。
ちょうどカメラのバッテリーも底をついたし。

温泉行こう。
腹も減った。

身近、とはいえないまでも、
日帰りで、こんな居世界の風景に身をさらせることが
驚きだ。
こういう場所や時間の味わいをたくさん知っているなんて
サンペイ君、豊かな人なんだねえ。

どうもありがとう。
時々はこういう思いをするのは大事だな。
と、今更ながら強く思った一日。






















posted by 前川秀樹 at 11:53| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

アン・オッドと夕餉

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mama!milk ライブ。
いつもながら、贅沢な時間を過ごさせていただいた。
さらに、今回はライブ前に、動画収録の時間があった。
定点カメラで一発撮り。
曲はアン・オッド。

観客は僕らだけ。贅沢プラス至福だった。
動画はたぶん近くyou tube で公開予定です。

アン・オッドは僕のリクエスト。
訳せばただ「唱歌」
不思議な曲だと思う。
僕はずっと
どこか国のトラディショナルだと
思っていた。
永い経年変化で角が取れ、丸くなってすべすべの手触りのような
なじんで耳慣れた曲
でもこれはお二人によって創作された曲。

聴くたび新しい風景がふわりと浮かんで、自然に脳内を旅できる曲。
それだけ懐が深いということなのだろう。

像刻展の作品たちとの空間的なコラボ、
というには舞台装置のしつらえが少々
物量不足気味なのは否めなかったけれど、
作品が前提というのとは違って、
言葉のやり取りだけの準備期間があって、
迎えたライブだったからか、
よりお二人の想像力が発揮され、
雰囲気の凝縮された良い時間だったようにも思える。

どうやら、恒例になりそうな雰囲気。
いらしてくださった方々。
お楽しみいただけましたか。
どうもありがとうございました。

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ライブ後はみんなで夕餉。
土器さんのごちそう。
簡単なものだけでね、っていってたのに、
あれあれ、次から次へと。なんだか十分豪勢なんですけど。
ごちそうさまです!
あ、でも土器さん写ってない。
写真右下隅のハイライトの吸殻の向こうあたりにいます。
この日の夕餉はマイノリティ達の宴。
これだけ人がいても不思議と話が割れない。
人の言葉を聞いてちょっとづつ積み上げていける会話というのは
単純なようで、実はそうそう出会えない貴重なものだ。
その行く先が楽しみになるような。

たいていは、
自分の言葉は誰にも受け取ってもらえず
誰かの言葉にはリアクションだけが返され
生きた言葉は返ってこない。
情報の投げ合いだけが延々と続くだけの時間が過ぎる。
誰かの独演会を聴く羽目になったり、
愚痴試合になったり、
そして
場にがらんどうの笑いだけがある。
こんなに空虚な時間はない。
だから僕はそういう匂いのする場所に極力近づかない。

だから、この夜にような味わい深い時間は貴重だ。
何カ月ぶりだろう。
楽しかったなあ。
まあ、ごちそうは時々だからいい、とも思う。
それなりの丁寧な蓄積が
会話を美味しく味わう下ごしらえだからね。

展覧会本番はまだ先なのに、
ちょっとすっきりしてしまっている
自分がいる。
いけないいけない、気を引き締めて
詰めの作業を始めないと。



posted by 前川秀樹 at 09:04| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月26日

ピクニック?

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不思議な顔合わせのピクニック?
ではなくて、この日は撮影。
これからの体力仕事に備えての腹ごしらえ。
図録のための最後の撮影です。
大きな作品なので、屋内での撮影は断念して、
ロケをやりました。
天気は快晴。
家から車で40分ほどのところにある、前方後円墳の上まで
えっちらおっちら重い3点の作品を運びあげる。
この場所を紹介してくださったノムラさんには教育委員会に許可まで取っていただいて。
撮影は関君。
お手伝いにいつもの滝下たっくんに
千恵と関君妻のミキさん。
もう、皆さんのお力拝借。
一人ではどうしようもないからね。
感謝です。

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丘の稜線に設置した3体。
じっと日没を待つ。
徐々に紺色に染まる空に浮かぶシルエット。

予想以上にいい写真が撮れた。
曇り空の怪しい空を想像していたのだけど、
これはこれで、すきっと澄んだ空気に浮かぶ影にしばし見入る。
写真の出来上がりが楽しみだなあ。
図録、充実したものになりそうですよ。



posted by 前川秀樹 at 18:39| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年03月20日

冬籠りの終了

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今日は進行中の図録の打ち合わせ。等など。

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とりあえずまず腹ごしらえ。

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私のは〜?
チャイの食欲は健在。
土器さんと関君の間をうろうろ。
後ろ足はへろへろのくせに良く歩く。
つくづくすごいお年寄りだなあ。

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さあさあ、やりましょう。
図録収録写真の掲載順決定ミーティングです。

ああ、なんだか人に会うことすらずいぶん久しぶりな気がする。
いや、実際久しぶりだ。
春一番も吹いたし、
いろいろといっぺんに動き始めた。
長かった冬籠りが終わりつつある。
長い缶詰だったなあ。
でも右手固まったまま戻らない。

さて、明日はママ・ミルクライブ。
その翌日は大きな作品のロケ撮影。
徐々にペースに慣れつつ復帰せねば。






posted by 前川秀樹 at 17:07| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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