2012年02月29日

逃避最終日 タカマツ 

さて、最終日である。
逃避も今日で終わりなのである。
発作的逃亡ではなくて、計画的逃亡のここが悲しいところ。

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おお!移動中いい廃墟発見。
病院だったらしい。和風屋根に西洋風間どり。建具も西洋風。
リノベーションできれば最高に面白いけど。ちょっとこれは大変かな。
いいねえ、絵になるねえ。

今日の午前中の目的は今回の高松YARROW TOURSの締め。

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イサムノグチ庭園美術館

待ってました!
雑誌でしか知らなかったんだけど、
本物がとうとう見られる。
見学は職員の方のレクチャー付きで1時間。
ミニツアーの形だ。
これもあらかじめ松村君が予約しておいてくれた。
もう、何から何まで上げ膳据え膳でほんとに。

敷地一帯の地面は朝一のツアーにもかかわらず、
すべてきれいに掃き清められている。
竹ぼうきの跡がなにより美しく、
ここを管理している方々の、
丁寧な気持ちがまず来訪者に伝わってくる。

ああ、この静かに無言でぞろぞろついてゆく感じは、
寺院とか遺跡の見学の時の感じと同じ。

分かりやすい簡潔なレクチュアも、
お寺で心構えや作法の手ほどきをされているようで。
あの大きな石積みの結界を前にして、
なんだか神妙できりっと気持の引き締まる思いだ。
思わず柏手を打ってしまいそうになるほどの緊張感。

制作途中の石達が点々と居並ぶ、サークルの庭。
作業場。巨大な蔵を移築した白壁の展示場。
住居。
そして、丘。
どこをみても、イサムノグチという芸術家の徹底した美意識の内側に
否応なく引きずり込まれる。
湾を囲む牟礼の集落、周りの石工の作業場、遠景に岩のむき出しになった砕石場の山々。
どれも、僕らがどこかで見たことのある、
日本に風景に違いない。
なのに、
これが見事にまったく知らない外国に見える。
彼がみた、JAPANが見えてくる。
これほど見事な呪術にかかる経験は多分めったにない。
知らず、自分の眼が彼の見た異国の風景にすり替わるようなのだ。
鳥肌が立つ。
と同時に、彼の物差しの大きさに溜息が出る。

正直想像していたのと全く違う印象だった。
石を見に行ったという感覚が全く残っていない。
石の肌触りとか、エッジとかの、部分の記憶は鮮明にあるのに、
まったく別の区切られた世界を歩いたという感触があまりに強くて。
未だに、この2泊3日の中でその時間だけが宙ぶらりんで浮かんでいるような
そんな状態だ。

撮影は残念ながら禁止なので、
写真集を購入した。

同じ石の彫刻公園で、
北海道、美唄のアルテピアッツァとつい比べてしまったが、
まるでその印象は違った。あちらはあちらで衝撃を受けたものだったが、
しかし、ああ、なんでこんなに印象が違うのだろう?
にわかに消化しきれそうにないので、あせらないことにした。

今回は、魂消た(たまげた)としかいいようがないわなあ。
いったい牟礼のあの場所はなんだったんだろう。

見学のあと、
松村君が

「ちょっとお時間ありますか?」

というのでなんだろうと聞いてみたら、
ノグチの石工を長年務めた和泉さんという方の自邸を
特別に見学させていただけるという。
庭園美術館の隣にあるまるで施設の一部の
ようなたたずまいのものがそれだという。

「ええ!?これが和泉さんの自邸?なんで松村君そんなに顔が利くの?」

どうもいろいろと彼は隠しカードを持っているなぞの人らしい。
で、ありがたく見学会オプショナルツアー。
その自邸はもちろんイサムノグチの設計だ。

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こちらもまた素晴らしかった。
これ以上深く術にかかると本気でやばい。
和泉さんのお嬢さんとも御挨拶と御礼を言うことができた。
もうマイリマシタ。としか言えません。
いやいや、ありがとうございました。

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パンチドランカーのような足取りの僕ら。


面喰らう讃岐。
麺喰らう讃岐。
men cry sanuki。

だったなあ。


最後の写真はこれ。

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マッキーの作業机。
作り手のすべてが物語られているよう。

なんだか3日間、高校生くらいにすっかり戻ったような気がした。
運動部の合宿みたい。
こんなに楽しかったのはいつぶりくらいかなあ。
みんなそれぞれ仕事をずらして時間を作ってくれて
どうもね。
マッキー 松村君。
本当にありがとう。
すっかり満たされた。
特上の旅でした。

ところで、だ。
もしこれが逆の立場だったらどうする?
茨城にこれほどのおもしろ資源が、この密度であるだろうか?
空港までの車の中、常陸の国に帰る野郎たちの話題はそれだった。
いやほら、あそことか。いや、案外県外からきたらアレも珍しいかも。
そういうふうに自分たちの住まうトコロを外から考えるのもいい機会だなあ
と思った。
実際にそういう機会があればいいと思う。

さて、帰るかね。
心から楽しかった。

また仕事だ。











posted by 前川秀樹 at 18:37| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

潜伏先 タカマツ  その2

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二日目
6jyoプロジェクト以来のお付き合いで、
何度かワークショップもさせていただいた、桜製作所永見社長に無理にお願いして、
作業場を見せていただく。
ここも何度か入れていただいているけど、
やっぱりすごい。マニュファクチュアの真髄ここにあり。
そういう空気が好きだ。

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すごい備蓄量のブラックウォールナットに圧倒される。
その後は併設された、ジョージナカシマ記念館の見学。
それぞれの作品のいわくや物語を職員トヨダさんのレクチュアを受けながら
見る触る。座る。
高級モダンだなあ。ハイソサエティだ。
永見社長どうもありがとうございました。

さて、昼だ讃岐といえばあれだ、ねえ?あれ。
マッキー、今回はどこがお勧め?

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今回はここ。手うち10段に挑んでみようかね(笑)
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ぶっかけ中でこの量。多いな。天ぷらはちょっと欲張りすぎた。
あいかわらずのコシですなあ。

で、午後は本日の2か所目。
木工作家?というよりもデザイナーかな。
松村君の工房アンチポエムへ。


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こんなですよ。
このトタンの味!市内を見下ろすロケーション。
高松市内でもこちらはちょっと山の方。
このトタンの大きめの小屋が彼の城。アンチポエム。
松村君も6jyoプロジェクトでの縁。
彼はその頃
まだ独立前で桜製作所の若きエースだった。
僕のバケツチェアの制作を担当してくれた。

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床がきれい。掃除が行き届いてるなあ。きれい。
これは性格だよね。

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工房の壁には彼のイマジネーションのほとばしり(笑)

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こちらもほとばしっとる。
ろくろで引いた砲弾みたいな木片に顔を描きいれて完成する「ぽっくん」
自家製ゆるキャラ、一部で浸透中。
正確無比なシンプルデザインに定評があるアンチポエム
だが、こういう遊び的な振幅が、思いもよらぬところから
社会の隙間を付く。
平たく言えば、着眼点のユニークさかな。
デザインの基本だ。

松村君ありがとうね。

さて、まだ日は高いよ。
そうだ。あそこに行こう、あのやばい場所。
以前、マッキーに、
「ゲキヤバスポット行きましょう。」
と誘われ、我々鉄錆わびれものフェチにはたまらん隠れ聖地のひとつ。
庵治港。

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ああ、絵になるー。
ここの見どころは何と言っても鉄扉なのだ。

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こんな鼻血が出そうに美しい抽象絵画が回廊のように連なる風景。
来るたびに塗り替えられて、また錆が進行して、を繰り返すから
制作中の絵画をこっそり見るようで、ドキドキするのだ。
作者は漁師さんと潮風なのだろうが、
むろんそこに表現の意図など存在せず、
どこまでも“無作為の美”。
こういう色と調子いうものに、イメージを見出してしまうのは
僕らの脳が、現代美術という呪にどっぷりと侵されてしまっているからなのか
あるいは、もうちょっと別の、脳が美しいと感じる、根本的刺激に依るものなのか
そんなことをついいつも感じて、考え込んでしまう。
でもここの印象はやっぱり回廊(ギャラリー)なんだよなあ。

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港の一番奥にある神社の石段。
梅が満開で早春の香りをあたり一面に揮発させる。
風もなく、ぽかぽか。
春が近い。
3時には一斉に出港する、ファンキーなカラーリングの漁船たち。
瀬戸内名物イカナゴ漁なのだ。

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登りきった眺めにすこぶる良好な高台のネットフェンスには
おびただしい鍵。
世界の中心で愛を叫ぶという映画のロケ地になってから
ここはそういう方々の甘い聖地でもあるのだ。
訪れたカップルは、鍵にメッセージを書き入れて、ここにつけてゆく。

で、われわれおっさんたちはそれをみて何をするかというと、
そのメッセージをつぶさに吟味。

〜また一緒に来ようネ。〜
「最後のネがneのほうが糖度が増しますね。」

〜●●●ちゃん大好き!●●●クン愛してる〜
「消えかかったマジックと鍵の錆具合がせりふと響き合ってぐっと来るね。」
「わびさびですよね。」
「70点くらい行っときますか」

恋のチョモランマ登頂おめでとう。
下山するまでが登山です。

とまあそんな、地味なおっさんズアトラクションをしばし楽しんだ。(笑)

でも以前より鍵の数が減ったなあと思っていたら、
なんだかすべて撤去されてどこだかに保存いたしました。
みたいな注意書きを発見。
残念。もっと逸品がみられたかもしれないのに。

さて、そろそろいい時間だよ。
今日も120パーセントの充実度だ。

今夜は何食う?

一鶴で、鳥腿焼きじゃないかな。

うん、それだな、高松グルメ第3弾は。

というわけで夜は鳥腿。
これまたにんにくと塩コショウが絶妙。ビールだビール。
僕は今日は飲まないから、運転手をやるよ。

レンタカーのマーチに男5人すし詰め移動。
僕運転。
車内、野郎超高濃度(笑)

その後これまた定番の高松港にあるumieで2日目の締め。
ああ、ここも大人のいいサロン空間。
僕のVOMERも置いていただいている。
ホットワインとカフェオレで何時間?

時間もたっぷり。
とにかく良く話したなあ。
いや、問答かな。

中世から近代という時代。エネルギーのこれから。モティーフと素材と方法の関係。
70年代建築と家具。
今日見れた印象深かったものの感想。
君はどう思うね?

ディスカッションをするのは僕はどちらかというと苦手。
議論になるほどの知識や判断材料が、自分の中にそれほどないからね。
でも生の言葉。
その人ならではの感想を聞いたり言ったりするのは好きだし、
それだけでも、想像力というものがありさえすれば、
十分に話はおもしろく転がる。

そろそろ、もう日が変わるよ。
寝床に帰ろう。
今日も濃かった。
お休みー。















posted by 前川秀樹 at 14:27| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

逃亡先 タカマツ。その1

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追われているんだ!敵に!頼む、かくまってくれ。(誤)

追われているんだ、時間と締め切りに。頼む、かまってくれ。(正)

現実逃避先として選んだのがなじみのある讃岐、高松。
いや、もっと正確には、槇塚登君のスチールファクトリーというアジトだ。
数年前、6jyoプロジェクト 欲しかったもの出来た。で、
僕は槇塚君には、
テーブル「タリット」「エイレネ
椅子 「7号2シーター」「3号カフェシェーズ」を作ってもらった。
あ、ペーパーフォルダも、
そういえばずいぶん協力してもらっている。 

今回、一人では逃げ切る自信がなかったので、
とりあえず他に3人ばかり巻きこんで、
2泊3日の格安ツアーのチケットを取る。

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常陸の国からの逃亡人、記念撮影。
おなじみ設計屋の卵タキシタタツシと、件の牛久に住む植木屋さんで、木工の野口兄弟。
みなものつくりに何かと関わる人たち。おもに木だけど。
要するに、槇塚登君、通称マッキーに案内をお願いしての工房巡り旅である。

まずは、スチールファクトリーでファーストインパクト。
何度来てもこの雑然とした感じはエネルギッシュで面白い。


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スチールファクトリーの大きな作業場の2階は展示ができるようになっていて、
事務所や、簡易ナンチャッテバーカウンターまで有る。
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パソコンモニターもこんな感じ。

彼はとにかく面白そうならなんでも作る。
手がまず動く。絵でも器でも什器でもオブジェでも。
積み上がる大量の実験作や材料から、アジトの主の
そのエネルギー量がうかがえる。

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スチールファクトリー今季新作のマッキーストーブ。
いや、槇ストーブ。火力が大きくて速熱。
薪をくべるマッキー。


ああ、面白かった。あっという間に初日が暮れる。
一旦ホテルに戻ってチェックインしてから、
さあ、牡蠣行こう!牡蠣!

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槇塚兄、槇塚鉄工所社長、涼君に運転をしてもらって、
恒例牡蠣小屋に。今回は牟礼の牡蠣小屋に。
旬だし、今年の牡蠣は太っててうまい。とのこと。
僕は2度目。

食べ放題で、なくなりそうになったらおばちゃんがまたバケツに入れて
ざらざら〜っと熱い鉄板の上にばら撒いてくれる。
つまりわんこ焼き牡蠣。
お酒は持ち込み。
ワインに茨城の地酒に。
僕も飲めないながらにちびちび。
あー、どれも合う。
木工デザイナー松村君も合流。
おっさんばっかり8人で牡蠣、牡蠣。また牡蠣で盛り上がる。
締めには牡蠣飯と牡蠣の味噌汁。
美味かったー。
満たされた。もう当分牡蠣はいいや。

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後ろの軍手とか手拭きはご自由におつかいください。
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御馳走様。バケツ一杯の牡蠣殻がだいたい一人分。
これ以上はちょっともう入らないかな。
満足。

初日からこんなペース。
逃亡者らしからぬ、警戒心のなさと遠慮のない羽の伸ばし方。(笑)
明日もあるから今日はもう帰ろう。





posted by 前川秀樹 at 12:43| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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