2011年12月15日

市杵島姫のお導きで。

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12月12日。夕刻宮島に渡る
広島駅から宮島口駅まで山陽本線で27分、
港から小さなフェリーに乗ってたったの10分。
対岸の宮島の灯りへとフェリーは凪いだ海面を進む。
期待が膨らむのです。

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この船とは逆に本州側宮島口へと向かうフェリー。
自走式デコレーションケーキ。

その日の宿は港のすぐそば。アナゴ料理がおいしいとの評判。

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愛層のすこぶるいいおかみさんに釣られて、
下戸のくせに熱澗なぞお願いする。
一人晩酌。あー、うまい。
評判に偽りなしだ。
ほんとにおいしい。アナゴのおつくりなんて初めて食べた。
揚げびたし、白焼き、天ぷらに柳川。酢締め。
最後の押し寿司もふっくらしていてシャリの中の昆布がしみる。
大きいので食べごたえもある。
明日東京に向けて帰るから、
明日朝に寿司折にして2本包んでください。とお願いする。

さて、シャワーを浴びて、一休み。
夜の散歩にでも行こうかね。
厳島神社。もちろん神社にはもう入れないけれど、
ライトアップされていてきれいよー。とおかみが言うので、
小一時間ほどの腹ごなし。

見えてきたー。
あれだー!有名な鳥居だ。
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小さな入り江沿いにぐるりと立ち並ぶ灯篭に沿って歩くと、目の前に現れる。
墨汁を流したような真っ黒な海上に浮かぶ、緋の巨大構築物。
うわー、なんだこれは!
鳥居自体が社のようだ。
参道の灯篭の足元に、まるで大きな庭石の様にうずくまる鹿達。
松の葉陰でお互いの毛並みをつくろいあう、ケモノの影法師が
時折、びいぃぃ、と小さく細くいななく。
石垣をリズミカルに打つ波の音。
冷たく空気が澄んでいて、静かだなあ。

松の葉を透過する灯篭の明かりすら、ツクリモノめいててなんだか妖しげだ。
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海上の奉納舞台を見下ろす、月齢16夜の衛星。
ああ、2晩前のあれは赤かったなあ。

それにしてもなんだろうこの出来すぎたシチュエーション。
うう、もう美しすぎて鼻血出そう。
美しさにくらくらする。
まあ、初日も無事に終わって、
おまけにちょっと酔ってるからな。
3割増しくらいに映ってるかも。

なんだか、夢をみているみたいで、
ふらふらといい気分で宿に戻る。
弁財天様、明朝改めてまた参りますので。

翌朝、
6時半、夜明け前。
もう酔ってません。残ってませんよ。
身を清めて、気持ちを切り替えて参拝。


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僕が一番乗り。朱の回廊が提灯の明かりでほんのり浮かび上がる。
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明けてきた。昨夜の満潮からは打って変わって波打ち際ははるか遠く。
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ぐるりと回廊をゆっくり廻り、
本殿の前に来てもまだ参拝者は僕一人、
背筋を伸ばして、柏手2回!
抜けるように素晴らしい澄んだ音だった。
おお、すがすがしいな。

厳島神社のご祭神は、宗像三女神、市杵島姫命(イチキシマヒメノミコト)、
田心姫命(タゴリヒメノミコト)、湍津姫命(タギツヒメノミコト)
海人族系のご祭神なのだろうけど、
その三柱の中の市杵島姫命が弁財天と習合して、祀られている。
三題噺は古くから日本人の十八番で、
ご多分にもれず三大弁財天がある。

ここ厳島をはじめとして、琵琶湖の竹生島の都久夫須麻神社、
そして三つ目が諸説分かれるところらしいけど、
神奈川江の島神社と奈良、天川神社。

天川神社には、
僕はこの夏に参拝することができた。
ここ、厳島で、ようやく全部回れたことになる。
僕は弁財天には何かと縁があって、
なんとなく全部ちゃんと行っておかないといかん、
とずっと長く思ってきたものだから、
個展でこの場所にきっかけができて、
お参りできた事に
感慨もひとしおだった。


芸の道(笑)
今後とも精進いたします。
一つよろしく見守っていてくださいませ。
御賽銭もちょっと頑張ります。
また広島に来させてください。
ぱん、ぱーん!
もう一回気持ちよく柏手。

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鹿もやっと起きて、枯れ草をちみちみ食んどる。
今回の個展では鹿男を作った。
エミシの鹿という名前を付けた。



さて、参拝終了。
今日は遠くまで帰らないと。

今回も美味しいもの沢山食べたなあ。
沢山ごちそうにもなりました。
旬のカキもメバルの煮つけも、それからピザにお好み焼き。
お客様からのいただきもののロールケーキは、
ええ!賞味期限本日中!?
深夜、食事の後ホテルでおっさん一人で食べましたとも。
ハーフサイズのロールケーキ丸1本(笑)
そうとう頑張りました。でもおいしかったです。

美味しいところだなあ広島。
なんだかこんなふうに書くと、
個展というより、ただの食い倒れ旅みたいだけど、
基本はギャラリーが僕の立ち位置だったんですよ。
食とか友達とのおしゃべりとか宮島参りは
あくまでその隙間の話であってですね。


で、今回お気に入りのお土産が、これ。
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ギャラリーのすぐ近く。長崎堂のバターケーキ。
素朴極まりないナイスデザインなパッケージ。
このイメージ通りの、しっかりときちんと作った
おどろくほど普通の味。
この普通がとにかくほっとする美味しさなのだ
普通においしいってすごい。
土器さんにはじめていただいてから、また食べたかった。
これはですね、もらった人みんな喜ぶイイモノですね。
3つ購入。


さて、
飛行機にも乗り遅れないように。
今日が東京、DEE’S HALLの10&100初日。
それに間に合うように、
市内でお土産を買わねば。
最後にちょっとだけギャラリーにも立ち寄って。

ああ、楽しかった。
広島小さな旅、これにて。







posted by 前川秀樹 at 22:07| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

スマリなか日

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広島、ギャラリーたむら 早いもので間もなく折り返しを迎えます。
初日をはじめ、おかげさまで沢山の方々においでいただいているようです。

僕は結局10日、11日、12日、13日、とちょこちょこ4日間ギャラリーで
皆様をお迎えすることができました。
遠くから足を運んでくださった方も。
1年と8カ月ぶりに迎えてくださった広島の方々も。
本当にありがとうございました。
御縁に感謝いたします。


さて、スマリ

遠く離れた土地で、故郷を思う。
過ぎて決して戻らぬ事を思う。
住まう場所をやむなく離れる、あるいは自ら。
変わってゆく地上。
一向に観えぬ行く先。
ためいきを一つ。
ふと夜空をみると、
変わらず瞬く群れ星、スマリ。

今回は多分、“望郷”がテーマだったのだと思います。
タイトルにもそうしたニュアンスのものがとても多い。

3・11から丁度9カ月。
作品作りと、未だ生々しい大事件のモティーフとは
なるべく距離を置くように心がけたのですが、

そうした感情は今
どうしても自分の中の深いところから
ひそひそと呼びかけてくる声のようになっています。


変わらないもの、そんなものはきっと存在しないのでしょう。
星たちですら。
けれど、自分の生まれる前も、
いなくなった後も
とりあえずそこに何食わぬ顔をして、
あり続けるだろうものを眺める。
すると時折不意にすっと視界が広がる気がしたり、
数時間後の明日、のことではなくて、
もうちょっと、いや、もっとずっと先の事を想像することが
出来るような気がするのです。

12月10日。深夜。
白熱球を通して見る有精卵のように、
鼓動の聞こえてきそうな、
赤くやわらかな天体を見上げながら
ふとそんなふうに思ったのでした。

見れば、歳の瀬の寒空の下、
広島の町の大通りで、
言葉少なな人々の群れが
皆同じものを見上げ、あちらにもこちらにも。
こんな町の風情もきっと珍しい。たぶん今夜だけ。
通りがかる他人同士が、
短い言葉を掛け合ってる。

ホテルの女性従業員達と、酒びん片手のおっちゃんが、
もうちょっと!隠れた!
なんて言いあってる。

僕も、故郷でも今の住まい所でもない町で、
そんななかの一人としてそこにいました。
ポカンと口をあけて。

新たに出会えた御縁と、展覧会の会場でだけお会いできる
親しくなった知人たちと。良縁奇縁悲喜こもごも。
その日1日で出会った沢山の人の顔をまた思い浮かべながら。
改めて、
ありがとうございました。
お会いできた事に感謝です。

さて、とはいえまだまだ後半はこれからです。
会期は25日までです。
写真集VOMER,物語集ZUFREともども、
会場でご購入いただけます。
サインも入れさせていただきました。

広島近隣の皆さま、お時間がありましたら、
ご覧になっていただけると
嬉しいです。
ちょっとだけ、冬の空に瞬くスマリの光のことなど
思い浮かべつつ。
是非。



posted by 前川秀樹 at 19:22| 作品発表、展覧会情報、等。 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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