2011年11月14日

線量計



1026 (6).JPG

これが線量計である。
土浦市役所で貸し出しをしている。

最初手にとってみてなんだか拍子抜けしてしまった。
何この丸っちいフレンドリーな感じのデザイン。

だって、放射能というかガンマ線を自ら測定する。
そんな事態が日常に普通にあるとは思わないじゃないか。
研究者でもあるまいし。
そういう特殊な器具って、
もっとこうごっついというかいかつくて、
メーターとかつまみとかいくつもついてて。
あの、ガイガーカウンターという
ひれ伏さずにはおれない厳格で深刻なイメージ?
理科学実験器具みたいなのを想像してたのに、

なんじゃ!この山田電器で炊飯器の隣あたりで
ワゴンに山積みされて売っていそうなカジュアルさ。
押すボタン二つだけってなんやねん!
キッチンタイマーと役割の重みが違うやろ!?

こんなんで計る数値が本当に正確?

でもまあ、仕方がない。
突っ込みだしたらきりがない。


借りたのは、実はうちではなくて、
すぐ近所のヒロセさん家。
これは先月の末の話。
当グログでもおなじみのタツシがその日は家の周りの計測という重要ミッションをになっていた。

1026 (4).JPG


計測するタツシ。



1026 (2).JPG
家の周りの地図と詳細な表、それにナンバープレートまで用意して計測。

あー出ましたねー。
うーん、雨どいの下とかはやっぱりおもわしくないねえ。
そのあと返却予定時間までちょっと時間があったので、
僕のうちの周りも数か所測定してもらった。

あー。こっちもどうもなあ、、、、。

1ミリシーベルト超の数値だと、国は除染を進めているようだけれど、
どこもかしこも、よろしくない数値がこの丸っこいプラスチック家電の液晶に示される。
とある雨どいの下には水ガメが置いてあって、
中には金魚のキンちゃんが、
今も何事もなかったかのように泳いどる。
その周りの土の数値も、うわあ。
この水も当然まあ良くはないだろうけど。
キンちゃんのようすに異常があったら考えるかね。

予想通りとはいえ、数字になるとやっぱりなんだかだんだん腹が立ってくる。
そうかあ、例外なくここにも放射性物質ってやつが降り注いだのか。

あとで、文科省の相談窓口に電話をして訊ねてみたら、
丁寧に基礎知識から教えてくれた。

数値を言ったらば、
まあ、すぐに健康被害どうこう言う数値ではありません。
もし、気になるようでしたら、表土を1センチ程度削って、
その土を手の届かないところに埋めてください。
とのこと。
え?1pだけ?

手の届かない所って言われてもなァ、、、。
このあたりは3月20日あたりに降った雨で一気にそれが積もったそうだ。
空気中の浮遊濃度は今はほぼ計測されないほどになっているので、
一度除染をすれば、これから先これ以上堆積するようなことは
無いそうだ。

ちょっと胸をなでおろす。
汚染、とか被曝とかそれはどこか遠い話ではない、
自分たちがその対象なのだ。
それはよくわかった。
まあでも、どうしようもない。
小さい子供がいるでなし、
とりあえずこのまま現状維持かのう。

それにしても数字ってやっぱり怖い。
目に見えないものだから、
それまでは何となく概念でしかなかった、放射性物質なんてものが
その安っちい液晶画面で一瞬で実態を持った。
またむかむかしてきて機械にあたりたくなってくる。
機械に罪はない。緊張感のないデザインにもまあ罪はない。
いずれにしろ、
僕の中でその“前”とその“後”では、もう見慣れた地面は別のものになったのだ。

ためいき。

もうこれ以上詳しく計るのは止めよう。
それだけで病みそうだ。
ちなみに裏返して見ると計測器はタニタ製だった。
タニタにも罪はない。






posted by 前川秀樹 at 20:13| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

爪痕。

2011111415110001.jpg



ここ2,3日、思うように制作の手が進まない。
あの、電球がぱっと点くような、クリーンヒットのひらめきも降りてこない。

これは、あれだ、その、なんだ。
煮詰まっているんだ。

だから今日は仕事止め止め。
こういうときは車で一人でどこかに出かける。

で、茨城の海の方に。
震災以来、近くを通りがかることはあっても
浜に降りるのは初めての気がする。

ちょっと荒れ気味の海。
なんか面白いもの流れ着いてないかな。

2011111414470001.jpg

流木やたら多いなあ。船なんかも。

2011111414360000.jpg


ここにも船。

いくらか気にいったのを手にして、車に積んでいたら、
おじさんが近付いてきて、

「な〜にあづめてるんだぁ。」

と声をかけてきたから、

「いえ、板ものをちょっとね。小屋の修理とかに使うんです。」

ふうん。

阿藤快似のガラガラ声のおじさん。僕の返事にはまったくヒットせず。
で、勝手にしゃべりだす。

流木が多いのは、震災がれきがずいぶん混ざっているからだそう。
北茨城か福島か。宮城か。

そうか、水につかって削られた、いかにも流木、というのに混ざって、
角の取れてないやけに生々しい、柱や梁材が混ざっているなと思っていたら、
そういうことなのか。
海流って、黒潮のイメージがあるから、西から東へとひたすら漂流物は運ばれるものと
思い込んでいた。
逆なのか。
そういえば、このすぐ近くの大洗に流れ着いた大量の漁具が
宮城県に返却されたってニュースでやってたなあ。
そう言ったら。おじさん。

「岸の近くは逆に流れてるんだぁ。戻りカツオはそれにのってこの沖を通るっぺよ。」

流れってそういうものなんだなあ。
じゃあこの船も。

なんだか、ずっと昔の話の様な気がする。
けど、そうじゃないんだなあ。
今立ってるこの足元の海沿いの道路の上も例外なく津波が洗っていったのだ。

そのあと、
なんとなく怖くて、震災後近づかなかった、
那珂港の魚市場にも行ってみた。


2011111414180000.jpg

ありゃあ。
岸壁が、岸から引きはがされているよ。


2011111414190000.jpg
見事に。ずるりと横滑りしている。

この右側がお魚市場。ここも当時、一階の高さくらいは
さっぱり濁流で流されていた映像が流れていた。でも
復旧は早かった。
今はもう再び観光バスがついて、賑わってる。
でもあちこち、港のコンクリートはぱっかり割れて、
足元のクレバスには海が侵入してきてる。

これがあの8か月前の一瞬で。

いや、いまさらながら、なんともはかない。
8ヶ月たった今でもここより北の海岸には、僕はまだ行けないでいる。
いずれにしろ、東北まで続いていた太平洋岸沿いの長い道はあれ以来、
福島で分断されてしまった。

ここはまだいいけど、
元には戻らない漁港もきっと数えきれず。
あっちもこっちも、大好きな海岸の景色は様変わりしてしまった。
なんともはや。











posted by 前川秀樹 at 18:58| LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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