2009年10月29日

11月ルビジノ

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寒くなってきました。
来週あたり、夜はそろそろ薪ストーブの出番となるかもしれません。

さて、ルビジノ。

11月は 7日(土) 8日(日)9日(月) 10日(火)

がオープンとなります。

銀杏のじゅうたんにはちょっと早いかな。
いつも準備は前日の金曜日なのですが、
行ってみてきれいだったならまたこちらにてお知らせします。

寒いので、おでんもまたはじまりました。
 
そうそう、像刻本、VOMER(ヴォメル)のチラシもルビジノでお配りしています。
ぜひお出かけください。

posted by 前川秀樹 at 19:47| Comment(0) | ルビジノ情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月27日

のびのび讃岐木偶

讃岐、高松の木偶の棒。
素晴らしくのびのびした作品が出揃いました。

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なぜかみんな踊っているでしょう?

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高松近辺の枝。今まででは使ったことのなかった、ビワやミカンの木
も混ざっている。

「先生、ビワの木は彫りやすいですか?」

「うーん、わかりません、が、なんだか堅そうですねえ。」

そんな間延びした受け答え。

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万力も立派。だって、桜製作所だもの。本物の職人の道具なのです。
僕もその使いやすさと安定感に脱帽。
いいなあ、ほっすィ〜〜〜い。

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実は、朝いつもより1時間スタートを早めたせいか、この二日間、着色の時間に余裕ができた。

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で、皆が着色作業に夢中になっている後ろで、
彼のようにお掃除を自主的に手伝ってくれる子が出てきたりして。
実は彼は参加者ではなくて、中1のお兄ちゃんのお迎えにお父さんお母さんと一緒に来ていた子。
まあ、何かやりたかったんでしょうけれど。
それにしてもできたお子さんです。本当にありがとう。

桜製作所に1年前に完成したジョージナカシマ記念館
展示スペースと、工房の間にある、普段は桜オリジナルの家具が並ぶ広いスペースが今回の作業場。
引き戸を引けば外にもつながり、外光も入る。
石の床がちょっと冷たかったけど、今回のような目的には使いやすかった。
ワークショップは今回が初めての試みだったので、参加者は少なめだったけど、僕としては、、そののんびりぺーすや、少人数ならではの距離感がなんだか高校の部活のようで、懐かしい感じがした。

ジョージナカシマ記念館、スタッフの皆さま、準備手伝ってくれた製作所の職人の方々、いろいろとお世話になりました。おかげさまで助かりました。
ありがとうございます。


ところで、今回、僕にしては珍しく夜はいつも誰かとどこかで食べたり飲んだり。
六畳プロジェクトの時からの付き合いのある、スチールファクトリーの槇塚登君、通称マッキーには夜遅くまで付き合ってもらった。
ちなみに、彼はその日いい味木偶を1日で彫っている。
会うのも久々だったので、お互いいろいろと募る話に話題は事欠かず、気がつけば日付が変わりそうに。

以前から何度かマッキーに連れられて邪魔している、UMIEカフェ
港の倉庫群の一角がリノベーションされた、広い2階のスペースの開かれた窓からは、全面港が見下ろせる。圧巻のしゃれた空間で僕も大のお気に入りだ。
そのオーナーの柳沢さんにも、今回初めてお会いすることができた。
マッキー、セッティングありがとう。
柳沢さん、楽しい時間を本当にありがとうございました。
関さん作、像刻本VOMERのフライヤーを快く受けとてもらった。
いろんな、すごい人との出会いは本当にうれしい。
逆にそのせいで落ち込むこともしばしばあるが、
こればかりは両方あるからこそ面白い。

桜製作所も、UMIEも、スチールファクトリーも
この不況下でなお新たなことをはじめようとしている。

先週の伊勢、信楽とは全然別の意味で元気づけられた讃岐行だったな。

でもちょっと発散しすぎたのか、ホテルの部屋のエアコン調整を間違えたせいか、昨日からすっかり風邪っぴきになってしまった。
その点は反省しなくては。

posted by 前川秀樹 at 21:05| Comment(2) | ワークショップ情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月22日

思い立ったがお出かけ魂 その3

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石拾うツマ。ぐったり疲れているくせにそれでも泳ぐチャイ。

 

 海女はいつものように海に潜っていた。その日、そのあたりの磯に潜るのはなぜか自分一人だけだった。

ひとしきり、程よく大量のアワビを船にあげ終わり、
最後にもうひと潜り、と慣れた仕草で、両肩に全体重を預け、
数メートル先の、
アラメに覆われた岩棚に向けて垂直にぐいっと潜行した時だった。

自分とまったく同じ身なりの白装束の海女の影が横切った。
今の今まで確かに、そこには自分ひとりきりだったはず。
とっさに岩棚のはしに手をかけ、波打つアラメの陰に身をひそめ、
さっきの白い影のほうを水眼越しに凝視した。

すると、同じように海草の陰からこちらをうかがう海女がいた。
その顔は、自分の顔だった、、、、。
トモカズキだ。殺される。海女はとっさい思った。
落ち着かなければ、、、、、。

 
 とか、そんな、ああ、怖い。それはこわい。
僕は海のそばで育ったから、海は泳ぐというより、潜る、ものだと勝手に思っている。けれど一人で海に潜る、というのはやはり怖い。
波で、揺られる海草や、日陰になっていて、ひやりと水温の低いところを通過したり、白くなった大きな魚の死骸を見ただけで、
心臓は波打つ。

鳥羽から車で30〜40分走ったところに、海女で有名な相差町(おうさつ)、というところがある。
そこの海女はむかしから、トモカズキのような海の魔物を恐れたようだ。漠然とした海中という異界の恐怖感の象徴が、トモカズキのような魔物、ということかもしれない。いや、本当に見た、という生々しい体験談もあったというから、やっぱり想像するとぞわっとしてしまう。

それをよけるためには、
潜水時に身に付けた白い磯着にイボニシ貝からとれた、貝紫の染料で魔よけの印を描いたという。
文字通り、魔を避けるものだ。

それがこれ。
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ドーマンセーマンという名前が有名だ。
星印の籠目紋と、九字を切る形の格子紋。
それがお守りになって、今も売っているところがあると聞いて、
立ちよったのが、
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神明神社、つまり相差町の氏神さんなのだが、通称石神さんと呼ばれているらしい。日の当たる高台で、気持のいいところだった。

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で、お守りがこれ、
なるほど、さすがに今は貝紫でも手書きでもなくて、麻袋に印刷のようだったが、色や風合いが実に素朴だ。
赤とか緑とか金色とか、いわゆる家内安全なんかの御利の文字が描かれた、神社のお守り、ではない。
ご利益は魔よけと、それを持つ女の願いをなんでもひとつかなえてくれる。というもの。
あとのはまあ、ちょっと付け足しっぽい。
袋の色合いがきれいだ。
社務所のおばあちゃんに聞いたら、

「貝紫は私らが子供のころにはもう使うてなかったわなあ。」

とのこと。そうか、そりゃずいぶん昔だ。
でも、麻の袋は今も伊勢の泥で染めているらしい。

石神さんの御祭神は、タマヨリビメ。タマヨリヒメと混同されているがまた別で、タマヨリビメは海神ワタツミの娘にあたり、
姉、トヨタマビメの子ウガヤフキアエズを養育し
やがて、二柱は結婚。
5子をもうける。
そのうちの一人、カムヤマトイワレビコがのちの神武天皇だ。
大まかに言うと古事記ではそう描かれている。
いずれにしろ、天孫族の始祖は異界の母を迎えたというところがみそだ。

そして、タマヨリビメを御祭神として崇めるのが、ここの海女たちである。
ここは女衆の参ずる神社なのだ。
僕らの行ったときにも、若い女性観光客らしき人たちが幾組もお守りを買い求めていた。
同じように携帯ストラップなんかもも売っていて、こんな小さな神社で結構な今風の町おこしが成功しているのかもしれない。

さておき、僕には気にかかっていることがあった。
異界、海の王と陸の王。天孫族の氏神伊勢神宮。白装束。
そして籠目、魔よけ、目くらまし。
とくると、昨日見たばかりの、
若冲の、鯨と象。鳥獣花木図屏風。そして神宮の森から受け取ったいろんな言葉たちが
パズルピースのようにここにきてぴたりぴたりとはまってくる。

うーん、なんだか知らないが良くできてるぞ。
しかし、しかしだ。
だからといって、その符牒の一致がなんなの?
と考えると、そこから先が僕の頭では読み解けずにいる。

絵はほぼできている。
でもこれ、何を描きたかったの?
何かがあるのはわかる。でも、
茂った木々の葉っぱの陰からちらリちらりとだけ見える、森の動物のように、正体は何だかはわからない。
たとえるならそんなイライラ。

まあ、でも今回はここまでかな。

石神さんにちなんで浜に出て、小石を拾う。
きれいなのがたくさんあった。
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この日、目に付いて手にしたのは1本または数本の筋の入ったものが多い。
筋?交差する眼・・・・。
あ、いかん。またこれは何かの目くらましに合ってるぞ。

言葉をいたずらに拾ってはいけないいけない。もう考えちゃいけない。

これから長距離運転が待ってるし。
それこそ危ない。

さて、遅めのお昼をどこかで食べて。
帰ろうかね。
はるばる茨城まで。

ああ、お出かけ魂も満たされた。





posted by 前川秀樹 at 14:49| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月20日

思い立ったがお出かけ魂 その2


移動である。
長距離移動で車の中で待ちぼうけ、おまけに雨なので、十分に外に出られず、チャイは爆発寸前。うるさ〜い!
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なのでとりあえず、ひと泳ぎさせて。
ストレス発散。

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伊勢神宮には離れた別宮がいくつかあって、鳥羽に近い伊雑の宮が有名だが、ここは、滝原の宮。水が清く深い山中にある。どの木もあまりに大きいのに驚く。巨人の森だ。

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虹も出た雨上がり。日が暮れる。光が美しい。

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夕飯は毎度のことながら、おはらい町、すし久のてこねずし。
カツオの漬けがのっかっていて、伊勢観光客の定番なんだけど、老舗ならでは、ここの味付けはやっぱりおいしいと思う。

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夜明け前にホテルをチェックアウト。
外宮の駐車場でしばしそらが白むのを待つ。いつものパターンだけど、この時間がまたいいのだ。
朝もやの向こうから砂利を踏む音。
何十メートルも高い木々の梢の先に、色彩が徐々に降り始める。
前日の雨のせいで、いつもにもまして空気はとびきり澄んでいた。
しっとりとした湿度が森を包む。伊勢の森の最も美しい時間。

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内宮の一番奥、天照大御神の本殿の前でカメラを構えた初老の男性がいた。石段の前に丁度幾筋もの光が差し始めたころ。
天の岩戸が開くときってこんな感じの光だったんだろうな。
僕も邪魔にならないようにフレームで切り取ってシャッターを押す。

おじさんにちょっと話しかけてみた。

「ほんまにきれいですねえ。」

「ほんまになあ。ちょうどおおけなスギが倒れたんで、こないに明るう光がはいるんや。こんなん初めてなんやで。伊勢湾台風の時以来やで。」

「え?倒れたんですか?いつ?」

「この前の台風や。18号。そらあえらい被害やったんや。石段のふもとにその切り株がある。けどな、本殿のほうには倒れんかった。やっぱり神さんが避けさせたんやなあ。て言うてんねん。神さんおるねんなあ。」


なるほど、遷宮を間近に控えた大切な時期に、
もし直撃を受けていたなら、
その神威もやや陰るというもの。
しかし神威は健在だったということなのだろう。

改めてその場所に行ってみると、
広い範囲に周囲の腐葉土とは違う色の砂が敷かれている。
その上にまた落ち葉が散っていて、
ちょっと見ただけでは、分からない。
半月ほど前までは、確かにここに巨大な木が屹立していたのだ。
カモフラージュされた切り株から、
30メートル以上離れた場所には、別の杉の巨木が立っているのだが、その片側の枝がすっかりとそげ落ちている。
どうやらこの木に正面から一旦ぶつかって、
枝を薙ぎ払いながら、それは倒れたらしい。
きっと嵐にまぎれてなお森に轟音が響きわたったに違いない。
翌日は伊勢神宮は参拝は閉鎖されたと聞く。

それにしても、たった10日ほど前のことなのに、ぶつかったほうの立ち木の傷跡以外にはまるでそんな天災の跡は見られない。
切り株しかり、倒れた時の地面のえぐれた跡、それを運んだであろう重機のキャタピラーの痕跡などなど。

おじさんに聞いた話がなければ、そんなことがあったとは思えないほどの迅速で完璧な修復ぶりだ。
一夜にして、一本の巨木が消えた!
あるいはそんな感じだったのかも。
これぞ伊勢の森の魔法だ。

もし、さっきのおじさんに

「あれはな、あの白装束の男衆さんたちが夜のうちにこっそり術をつかうねん。」
と、さらりと言われたら、

「ほんまですか!?それ!?」

と、僕はマジで効き返してたと思う。
やっぱりここは、そういう気になる不思議な場所なのだ。

五十鈴川で、今一度手を清め、すっかり満足して、
再び駐車場に向けて橋を渡るころ、
日が昇り、ようやく逆方向に歩く人の群れが橋をこちらへと渡り始めていた。
今日は日曜日。あの本殿の前の杉の巨木の傍らを、沢山の参拝客が通り過ぎて、石段を登り、白い垂れ幕の前で柏手を打つのだろう。

杉の木が本当にそこにあったことや、
白装束の男衆さんたちがこっそりと施した術に感づく人はどれだけいることか。

思い立ってのお伊勢さん。
この1年のおかげまいりと、プラスアルファの願掛け、
個展と像刻本ヴォメル。
両方、無事やり遂げられますよう。
僕も思いを込めて柏手を2回打った。

不思議な術に実は内心ちょっとだけ期待している
ずうずうしい僕の本心をアマテラスはきっとお見通しだ。


posted by 前川秀樹 at 22:25| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月19日

思い立ったがお出かけ魂 その1

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とにかく思い立ったのだからしかたがない。
よし、明日お伊勢まいりをしよう

丁度信楽のミホミュージアムで、若冲をやってるはず。
それも見たい、どうしても。
なるほど、ミュージアムは朝10時開館となってるから、
一番に入ろう。
ということは、茨城を朝3時ころ出発すれば
10時には着くな。
伊勢で1泊だな。

唐突な上、いつもながらずいぶんおおざっぱなプランだ。
急なので、チャイも人には頼めず、一緒に連れてゆくことに。
急きょ、長距離移動に備えて車の後ろ座席に
ベニヤ板で台をしつらえて、フラットにして毛布を敷いて。

真っ暗なうちに出発して、東名高速をトラックに混ざって西行。
おおざっぱプランにもかかわらず10時5分にきちんと
到着した。
おお、幸先いいぞ。最初がピタッとはまると実に気持ちがいい。

ミホミュージアムは7月に来たばかりだが、今はすっかり秋の装い。
紅葉の2歩くらい手前といったところだ。

で、若冲である。
お目当ての一つは、

「象と鯨図屏風」

昨年2008年夏に東北の旧家にて初めて存在が確認された。
修復も終わって、なんと今回が初公開。
6曲1双の、巨大な屏風絵だ。

それにしてもなんとおおらかな。
画面の外へまっすぐ突き抜ける潮吹きの、ためらいのない勢い。
どっしりと地面に伏した象の愉快そうな表情に、
くるくるとらせんを描く鼻の動きの愛らしいこと。

コンセプト?そんなこと知らへんわ。
陸のおうさまと、海のおうさま、両方描きたかっただけや。

80歳を迎えた奇代の絵師のそんな言葉といたずらめいた笑顔が屏風の陰に見え隠れするようだ。
モティーフとする動物への愛情に満ちたまなざしで知られる若冲だが、
その絵からにじみ出る突き抜けた境地が
214年の時間を経て、
僕ら観るものすべてをひよっこに変えてしまう。
感動はもとより、そう、圧倒された。
まだまだ若輩でした、と思わず首を垂れてしまう。
この世界には、尊ぶべきものがきちんと存在するのだな。
と、上からの押しつけや啓蒙でなく、
さらりと知らしめてくれる。そこがまた粋だ。


もうひとつは、
有名な「鳥獣花木図屏風」
これも奇妙な印象を受ける絵だが、
こちらはまるで飛び出す絵本のように、とにかく見る者をわくわくさせる、楽しくいたずら心を刺激する名画だ。
6曲一双の広い画面はすべて、約2センチ四方のマスに割られていて
それに一つ一つ色づけされている。
経と緯という要素と、周囲の装飾的模様などから、
インド更紗との関連が解説書には描かれているけれど、

これはどう見てもモザイク、
しかもタイル絵じゃないかなあ、
良く見るとただ背景の浅黄色の一ます一ますが、まるで釉薬がはげ落ちたようにさらに薄い水色で、ヨゴシが入っている。
マスの中心の色は薄く、外に向かって濃さが増し、縁に近づくにつれまたその明度が上がる。タイルの色ガラスの釉薬の濃淡そのものに見える。
うーん見れば見るほどマスマス(笑)タイルだ
一ますの色の濃淡の美しさから始まった視点を、後ろに下がりながら少しずつ引いてゆくと
徐々に色が隣のマスとつながり、色彩が共鳴し始め、
個々の動物の部分が突然現れる。奇妙にディフォルメされたエキゾチックな動物たちがやがて群像となり
ついにはちりばめられた色彩の全体像が浮かぶ。

観賞者が観ようとすると、
さまざまな立ち位置を絵が要求してくる。
これもまた若冲の仕掛けなのだろう。


ウタダヒカルのPVにこの絵の動物がCGで動き出すシーンが確かあって、それがまた美しかった。
時代によって、さまざまに読み替えられるこういった良いテキスト
こそ、名画の証なのだ。
なぜか時を越えていつも新しい。
はからずも形を得た日本の常若の思想そのものがここにある。

たとえば、籠目という、定番の呪術図形がある。
あれは直線を複数交差させることで出来るたくさんの“目”
に、妖怪や魔物など“わるいもの”が一瞬目を奪われたり、恐れをなしたり、
また文字通り、目をくらますことで、
人は難を避ける、というのがその意味らしい。
もっともそれで目を回している魔物の姿を想像すると
魔物といえどもどこか滑稽でかわいらしい。

若冲の仕掛けた無数の“目”はこれだ。
鯨と象のように圧倒される作品ではなくて、
つかまってしまうととにかく前から立ち去れなくなるのだ。

細部からさらに細部へ、引きからさらに俯瞰へ、
繰り返す。
ずっとその呪いに翻弄されたいようなそんな抗いがたい危うい魅力がこの絵に強くある。
いつしか自分が目くらましにあっている“魔物”になっていることに気づく。
この絵の前は現に混雑していた。
そして皆、目くらましをくらってうろうろと動かされているので、ついつい足が隣の人とぶつかり合ったりする。
これは、この絵が“有名”だからではない。
時を越えてその“仕掛け”が今現在も有効に機能していることの証拠だ。

他の作品もまた、負けず劣らず面白いので、
時間はあっという間に過ぎてしまった。

若冲はほかの多くの絵師と同じように、狩野派の門下で徹底的に
基礎を学んでいる。

この展覧会のポスターにある、

「法度(ルール)の中に新意を見出す」

という言葉が、観終わったあとリフレインのように効いてくる
コンセプトもしっかりと際立ったいい展覧会だったなあ。

さて外は降ったりやんだり、また日がさして、を繰り返す妙な空だ。
午後からは伊勢に向けてもうちょっと走ろうかね。

posted by 前川秀樹 at 20:14| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月15日

UMA?

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昨日ツマが買ってきたばかりのリンゴに
今朝不思議な穴が開いていた。

なんだこりゃ?
昨夜のうちに何があった?

この家の中にUMAが!?

??????????
posted by 前川秀樹 at 21:04| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月12日

5th DEE'S 木偶終了!

最高の秋晴れ。
遠くの富士山もきれいに見えた。
 
おなじみDEE'S HALL でのワークショップももう5回目となった。
毎回、参加者の方々のうち半数くらいは、すっかりおなじみになった面々がそろう。
毎回、2日間ずつで、1日参加の方と2日間参加の方々がいる。
きっちり皆勤賞の参加者の方もいて、
そういう方は今回で都合10日間も
受講してくださっていることになる。
ありがたいことにそうなるともう、熱心で優秀な聴講生のようで、
腕も上がれば、すこしずつ道具も増える。
作品もすこしずつ味わいが出てきて、
これがまたなんともいえずいいのだ。

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講評会です。毎回とにかくうなります。
それぞれの魅力をどんな言葉に変えようか、最大の思案どころ。

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今回は子供参加者が一人もいなかったので、落ち着いた大人の教室だった。1日中と聞くと長く感じるけれど、実際作り始めると、熱中すると時間はあっという間に過ぎ去ってしまう。時間は無慈悲なのだ。

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一息つける1日のオアシス。毎度おいしい土器さんのお昼ご飯!
バイキング方式で、お皿にテンコ盛りです。
今回は僕も全品食べられた。
ごちそうさまでした。午後の活力。

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参加者のGさんのの愛犬2匹。
朝、来てから夕方までずっとこの場所を動かない。周りで人がご飯を食べていても動かない。ノーリードなのに。近くに人が来たときだけ、しっぽを振ってなでてなでて〜、とせがむ。うーん、かわいい。
東京の犬って感じだ。同犬種でもうちのチャイは犬の皮をかぶった何か別の禽獣なんじゃないかなあ。いまさらながら。

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ワークショップは、学校ではなく、
いわゆる素人さんに向けたもの。
だから、とにかく、一日楽しく。一緒に過ごしましょう。
という場づくりが一番の目的。
木を彫る、物を作る。初めての道具を使う。知らない人のつくったものを見る。いろいろそれって楽しいでしょ?というのが伝われば僕としては大成功なのだ。
もちろん、参加してくれる人ばかりでなく
その会場を提供してくれて、
企画を立てて、人を集め、といった強力サポートがあって初めてその
“場”はできる。

そういう意味で、回を重ねてきた、DEE'Sでの“場”の質は高い。
なによりまず僕が楽しい。
あらためて今回もかかわってくれた皆さんに大感謝だ。


丁度今僕は展覧会の準備中で、
制作の毎日。
なので、モノツクリでない人の発想や、人が刃物を初めて持つとどんなふうに木を形作っていくのか。といった道具と素材の理屈のようなものが見えてきて、
作品のピュアさや素朴さがいつもにまして新鮮に映った。
リセットできた。

さあさあ
今度ここに来るのは自分の番だ。

がんばらないと。


あ、24日、25日の高松でのワークショップ。まだ、空きがあるようですよ。
迷っている、関西方面の方。
お申込み。急いでくださいね。



posted by 前川秀樹 at 08:45| Comment(9) | ワークショップ情報 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月09日

うわあ!

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 台風一過、今日は気持ちのいい高い空だった。
それにしても、1昨日の晩の嵐はすさまじかった。
夕方から荒れ始め、暮れてますます雨風は激しく窓をたたきつけるようになり、
夜中2時3時にはとにかく寝ていられないほどの恐ろしい音に加えて、
激しく緩急を繰り返す強風による壁の振動。

さすがに僕も寝ていることはできなくなり、
家じゅうの電気をつけて見回りをはじめた。

幸い、アトリエに少し雨が吹き込んでいる程度で、
家の周りのガラクタも吹き飛ばされてはおらず、
停電もなくその夜は過ぎた。

翌日も雨は止んだものの、熱風となった風のその勢いはまったく収まることはなかった。
ニュースを見るとその猛威の傷跡が生々しい。

うちと同じ土浦市内のとある集落はなんと
竜巻(らしきもの?)に襲われたという。
恐ろしいことだ。

今日車でそばを通りかかったときに、
窓から少しその傷跡が見えた。
大きな木は根っこから折れて、看板は傾いているし、
瓦をすっかりはぎ取られた屋根やブルーシートの青がともかく痛々しかった。
真っ暗闇で、窓ガラスが割れて、いきなり瓦が轟音とともに
次々と屋内に飛び込んでくるようなそんな状況は
ちょっと想像するだけで
背筋が総毛立つ思いだ。

被害に見舞われた家は確かにお気の毒なことなのだが、
この状況をみると、
被災者の方が軽いけがですんだのは、不幸中の幸いといえるのでは、
と思ってしまった。

夕方には人がたくさんいち早い復旧作業に取り組んでいた。
ご苦労様です。

ところで今日は
DEE’Sのワークショップの搬入日でもあった。
常磐高速から見える、いつもの倍くらいに増水して膨れ上がった
利根川や小貝川を見ながら往復した。

まれにみる大きな台風が通り過ぎた後だったからか、
東京も空気はいつもよりずっと澄んでいるように感じた。

あしたも秋の晴天らしい。
ワークショップ1日目。
いい木偶の棒がたくさんできるといいと思う。



posted by 前川秀樹 at 21:00| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月06日

秋雨続く

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雨が続く。
ルビジノの庭もどうにもぬかるんで仕方がない。

DEE’Sのワークショップも近い。
いつも搬入とお膳立ては前日に済ませることになっている。
ほかにも毎度おなじみ土器さんのおいしいお昼ご飯の食材なんかもその日にお届けする。

当日は当然のこと、搬入日の雨も結構いやなものだ。
車からギャラリーまでのたった10メートル余りの距離を長く感じてしまう。

昨日はサンプルの木偶を新たに二つ作り足した。
毎回少しずつ増えていくようにしている。
作りながら、
今回はこんなこと話そう、とか、
この辺を注意してうまく伝えられると
すんなり進むんじゃないか、とか、
初心者の方への道具の使い方は今まで間違って教えてたんじゃないか、
とか、いろいろと“自分課題”を頭に浮かべる。

そう考えながらの準備を進めるうち、だんだんと楽しみが具体的になってくる。

うーん、しかし8日あたり台風が来ているらしい。
それてほしい。
あそうか、テルテル坊主木偶彫ればよかったんだ。
つるすタイプの。
待てよ、テルテル坊主ってそもそも始まりはなんだろう?
あれは古い民間信仰?それとも大陸起源?
いやいや案外、昭和の流行の産物だったりして。

まあそんなこと考え始めるとまた頭がソッチのほうに行ってしまうな。
ひとまず出来上がった新木偶に手でも合わせておこうかね。

天気が良くなりますように。

マンマンチャン ア!
posted by 前川秀樹 at 08:43| Comment(0) | LOLO CALO HARMATAN | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年10月01日

VOMER解禁!

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なんだ坂こんな坂♪
で、1年あまり。
ようやく本の詳細が決定いたしました!
本日情報解禁です!
タイトルは


VOMER (ヴォメル)

です。
昨日チラシの入稿をしました。
と、デザイナー関さんから報告あり。
9日にはチラシ完成予定です。

いよいよですよ。

一般発売日は年明け1月3日。お正月!めでたい!

そして、

当然先行発売を予定しています。

DEE’Sの第3回像刻展会場に限り、
一般発売に約3週間先行する形で配本決定です。
これまためでたい!


印刷屋さん大わらわ(笑)

本の本体のほうは最後までデザイナー関さん主導で、
編集渡辺さんとで、さらに精度と迫力を増すべく現在精練作業続行中です。
とことんまで粘れる40代の自信と底力!
僕はまだラフ第1案のチェックをさせていただいたばかりですが、

すでにもう鼻血が出そうなのです(笑)
手前味噌承知でいえば
もっのすごくカッコイイ〜本ですよ。



今回は像刻展のDMもまとめて関さんにお願いしました。
本のほうはすでに僕は、後方支援部隊的立場ですが、
像刻展の作品のほうは今まさに最前線。
制作ドツボ真っただ中です。
そちらのほうも、
すごいですよ。
今回は。
手前みそですよ。
はい。

展覧会情報はまた追って。

とりあえずは
本なのです。
すごいのです。
2009年の締めくくりと2010年のスタートは、

VOMERなのです。

ルビジノも今月はオープンです。
ちなみに3日は土浦の花火大会がありますよ。
posted by 前川秀樹 at 19:03| Comment(0) | 像刻本状況 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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